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ロシアと中国の微妙な距離感
梅澤 利文
2022/03/01

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概要

減速が見込まれていた中国の2月のPMIは、製造業、非製造業共に小幅ながら市場予想を上回りました。ゼロコロナ政策など新型コロナウイルスへの対応などが下押し要因と想定されていましたが、影響は小幅でした。当局の景気てこ入れ策で今後の景気回復が期待される一方で、ウクライナ情勢は中国にも難しい選択を迫る可能性があります。



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中国の2月のPMI:製造業、非製造業共に市場予想は上回る

中国国家統計局が2022年3月1日に発表した2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2と、前月の50.1、市場予想の49.8を上回りました。なお、PMIの景気拡大・縮小の目安は50です(図表1参照)。

建設業とサービス業を対象とする非製造業PMIは51.6と、前月の51.1、市場予想の50.7を上回りました。

どこに注目すべきか:中国PMI、純輸出、ウクライナ情勢、軍事侵攻

中国の2月のPMIが減速すると予想された主な要因は、春節(旧正月)連休などを受け生産活動が停滞するとの懸念や、一般客を断念した中で開催された北京冬季五輪で新型コロナウイルスの感染再拡大を抑制するため厳格な政策が採られるとの思惑があったと見られます。

ところが、発表された製造業PMIの内容を見ると、先行指標となる新規受注が2月は50.7と、前月の49.3を上回るなど、小幅ながら改善が見られました。非製造業PMIにおいても、2月の雇用PMIが48.0と前月の46.9を上回り、水準は低いながらも、昨年夏以降で最も高い数字となっています。

なお、中国では3月5日に全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕します。全人代では今年の経済成長目標が示される予定ですが、21年10-12月期の前年同期比4.0%の成長率を上回る数字が予想されます。先週、共産党中央政治局が今年の方針として、経済安定化に向けマクロ経済政策を強化する方針を示しています。金融緩和などの景気刺激策が想定されますが、2月のPMIによれば今年のスタートはまずまずと見られそうです。

しかし、ウクライナ情勢が懸念材料となる可能性が考えられます。中国経済への直接的な影響としては原油価格の上昇が考えられます。中国の経済成長は特にコロナ禍では貿易、つまり純輸出が成長率を押し上げていました(図表2参照)。そこで原油価格上昇のGDP(国内総生産)への影響を試算すると、中国は日量1100万バレル程度の原油を輸入しています。仮に原油価格が10%上昇すると、中国GDPの約0.2%程度に相当することから、多少幅を見て成長率は0.1%~0.2%程度の押し下げ効果が想定されます。もっとも原油価格がどの程度変動するかはウクライナ情勢に左右されますが、成長率の押し下げ要因となりそうです。また、今のところ中国はウクライナ情勢から遠いとの見方からか、人民元高傾向となるなど、経済成長への影響には様々な要因が含まれる点に注意が必要です。なお、中国では欧州と異なり天然ガスのエネルギーとしての使用割合は比較的低く、むしろ石炭価格などの動向に注意が必要と見られます。

次に、中国にとってウクライナとロシアの戦争は、経済もさることながら、政治判断、つまりロシアとの距離が重い課題と見ています。北京五輪開催にあたり習近平主席とプーチン大統領は直接会見し蜜月を演じました。ただ、その後の中国には場当たり的な外交姿勢が見られます。例えばロシアを支持する一方で、ウクライナの領土と主権を尊重すると表明しているからです。もしかすると、ロシアがウクライナに軍事侵攻することまでは想定していなかったのかもしれません。または、ウクライナの国を守る姿勢に世界が共感するのを見て軌道修正しているのかも知れませんが、真相は不明です。ただロシアに比べ世界中に製品を輸出している中国にとり、ロシアとの距離感は極めて複雑です。欧米などの経済制裁の効果に中国の姿勢が影響することも考えられるだけに、ウクライナ情勢の展開を占う上で、中国の動向にも注意が必要と思われます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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