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- ブラジル、ルラ次期大統領に市場の警戒感
ブラジルの大統領選挙で選出されたルラ氏は、来年1月、大統領に就任する予定です。新政権に対する期待と不安が交錯するなか、財政政策が市場の最大の関心事と思われます。選挙公約を実行すれば財政規律を損なう恐れもあるだけに、今後の展開には注視が必要です。
ブラジル大統領選挙:接戦だった選挙後の市場動向は不安定な展開
ブラジルで2022年10月30日に投開票された大統領選挙の決選投票は左派のルラ元大統領(労働者党)が当選しました。得票率はルラ氏が50.9%、現職のボルソナロ大統領(自由党)が49.1%と歴史的な大接戦でした。なお、ルラ氏は23年1月に大統領に就任する予定です。
大統領選挙の決選投票後のブラジル市場では通貨レアルが上げ下げする展開となっています(図表1参照)。
どこに注目すべきか:ブラジル大統領選挙、歳出上限、憲法改正
事前の市場予想では、ブラジル大統領選挙に向けて、レアルなどの変動が懸念されていましたが、むしろ決選投票後のブラジル市場に変動が見られます。例えば、ブラジル国債利回りは夏場にインフレ率が低下したことに伴い急低下した後、大統領選前までは落ち着いた動きとなっていました。しかし、足元で国債利回りは急上昇しています。そこで、レアルの動きを参考に大統領選挙後の市場の変動要因を振り返ります。
まず、大統領選後のレアル高を演出したプラス要因としてボルソナロ大統領が素直に選挙結果を受け入れたことが挙げられます。選挙結果が歴史的僅差であったこともあり、ボルソナロ氏の支持者による道路封鎖などで混乱が生じたこともありますが、大統領自身が冷静な行動を呼びかける(意外な)結末となりました。
なお、ボルソナロ氏が属する自由党は大統領選と同時期に行われた議会選挙で上下院で多数派となっています。今後の党の連立次第ながら労働者党を抑える勢力を有していることから、無用な争いは控える戦略なのかもしれません。
次に、より注目すべきマイナスもしくは懸念要因です。主なものは財政悪化と新政権人事です。財政悪化を懸念して長期金利はすでに上昇しています。その背景は新政権がブラジルの財政規律を維持してきた歳出上限ルールを脅かす恐れがあるからです。憲法で定められた同ルールは、イメージとして公的支出の増加率をインフレ率の伸び率以下に抑える措置です。歳出上限ルールを規定する憲法改正法案の関連法は16年12月に公布されました。その効果は明確で、ブラジルの財政赤字対GDP(国内総生産)比率は、ルール導入後、コロナ禍の緊急事態を除き改善しているからです(図表2参照)。ルラ氏の政権移行チームが検討している歳出案は、公約である低所得者層への支援などを含んでおり、金額などは、あくまで検討段階ながら、憲法改正により歳出上限を超える公算です。財政規律の喪失などが懸念されます。
なお、ルラ氏が以前大統領であった時期(03年~10年)の政策運営は、年金改革に取り組み、財政拡大も過度とは言い難いと思われます。ただし、今回の選挙で歳出上限の柔軟化を公約としており、今後の展開には注意が必要です。
新政権の人事にも市場は警戒感を強めています。ルラ新政権が発足する来年1月に向け、年内は閣僚の人事が注目されます。10日に政権移行スタッフが閣僚候補として発表されました。問題となったのは企画・予算編成・管理のマンテガ氏です。マンテガ氏はルラ元政権やルセフ元政権下で財務相などを務めましたが、ルセフ政権時にペダラーダ(粉飾会計)を行い、財政悪化を招いた張本人と評価されているからです。一方で、ブラジル中央銀行のネト総裁はインフレ抑制に高金利政策で適正に対応してきましたが、ブラジルでは政権交代に伴い中銀総裁人事も行われることが慣例なだけに今後の展開を注視する必要がありそうです。
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