Article Title
経済再開を色濃く反映した中国1-3月期GDP
梅澤 利文
2023/04/19

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

中国の1-3月期の実質GDP成長率は輸出データの上振れなどからある程度想定はされましたが、堅調な結果となりました。ゼロコロナ政策停止による経済再開が成長率を押し上げたとみられます。もっとも、内容を見ると、中国の景気回復の持続性には疑問が残る面もあります。中国当局が目標とする5%前後の経済成長は達成可能と見ていますが、景気押し下げ要因への注視を心掛ける必要がありそうです。




Article Body Text

中国1-3月期のGDP成長率はサービス業の押し上げで市場予想を上回る

中国国家統計局が2023年4月18日に発表した23年1-3月期の実質GDP(国内総生産)成長率は、前年同期比で4.5%増と、市場予想4.0%増、前期(22年10-12月期)の2.9%増を上回りました。(図表1参照)。新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策が終わり、外食や旅行などサービス消費が持ち直しました。

GDP成長率を産業分類別にみると、主にサービス業を反映した第3次産業(小売、運輸、金融、不動産、情報技術など)の成長率が前年同期比で5.4%増と、前期の2.3%増を大幅に上回った一方、主に農林水産業の動向を反映する第1次産業や、鉱工業や製造業、建設業などを反映する第2次産業は前期を下回りました。

中国の小売売上高はゼロコロナ政策停止を素直に反映した内容

中国の1-3月期の経済成長率はサービス消費の回復を受け市場予想を上回りましたが、GDPと同日に発表された月次の主要経済指標も概ね整合的な傾向を示しました。3月の小売売上高は前年同月比で10.6%増と市場予想を大幅に上回りました(図表2参照)。一方で、工業生産や固定資産投資は市場予想を下回りました。

まず、3月の小売売上高をゼロコロナ政策が停止した昨年12月と主な構成項目について比較すると、外食を反映する食料が3月は前年同月比で26.3%増と、昨年12月のマイナス14.1%減から急回復しています。また、宝石や化粧品などブランド消費も回復しています。一方で、ゼロコロナ停止による感染拡大懸念で昨年12月に急増した医療品は大幅に減速しています。

なお、年末に減税措置が終了し年初に売上げが落ち込んだ自動車は、3月に落ち着きは戻りましたが低水準にとどまっています。

また、上海などコロナ禍の影響を受けた都市の地下鉄利用客数をみると、コロナ禍前の水準に近付くかすでに回復しており、経済再開の動きが本格化していることをうかがわせます。

中国の景気回復の陰に、見落とせない問題点も残されている

経済再開というわかりやすいテーマで回復した小売売上高とは対照的に、工業生産や固定資産投資は市場予想を下回るなど、気になる点も見られました。

工業生産は前年同月比で3.9%増と、市場予想の4.4%増を下回りました。コンピュータなどが前年比でマイナスとなっています。自動車生産はプラスながら、やや勢いに欠ける印象です。もっとも、セメント(10.4%増)や鉄鋼製品(8.1%増)など明るい兆しも見られます。


中国の工業生産のマイナス要因として輸出の不振を想定していました。グローバル経済が鈍化する中、中国の生産活動にも悪影響があるとの見立てです。しかし、3月の中国の輸出は前年同月比で14.8%増と、市場予想のマイナス7.1%減を大幅に上回るものでした。3月の輸出回復の持続性は工業生産の動向にも影響するだけに今後の動向に注目しています。

固定資産投資は3月が年初来前年比で5.1%増と、市場予想(5.7%)、前回(5.5%)を下回りました。不動産投資がマイナス5.8%減となったことが引き続き下押し要因です。しかし、固定資産投資のその他の主要項目であるインフラ投資や製造業投資もプラスながらやや勢いは鈍くなっています。中国経済の下支え要因となるのか、今後の展開に若干の不安が残ります。

なお、これまでも指摘してきたことですが、中国の住宅投資の一部指標に底打ちの兆しも見られます。例えば、新築住宅の販売面積は小幅ながらプラスに転じました。しかしあくまで底打ちの可能性の段階とみています。

経済再開を受け、消費は堅調な一方で、生産や投資の回復は勢いに欠けるというのが大まかな整理ですが、消費に死角がないわけではありません。失業率の改善が鈍いからです(図表3参照)。中国全土の都市部失業率は5.3%ながら、若年層の失業率は再上昇しているのは気がかりです。

中国経済は当面、経済再開の勢いで改善が予想され、年前半までは強い数字が期待されます。しかし、経済再開による景気回復の長期的な持続性には疑問も残ります。中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁は先週、今年の成長率目標は達成できる見込みとの認識から、大規模な刺激策に否定的でした。当面はその通りで、様子見をするとしても、年後半頃からはデータ次第の政策運営となる可能性も考えられます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


米5月のCPI、インフレ鈍化へ流れを引き戻したが

インド総選挙を終えた後のインド中銀の出方

5月の米雇用統計の強さと今後のポイント

ECB:市場予想通りの利下げ、注目は次の一手

メキシコ:選挙結果で市場は大荒れ、その背景は

フランスの格下げは何が理由だったのか