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- 中国7-9月期GDP減速の背景に潜む今後の課題
中国の7-9月期GDP成長率は前年同期比4.8%増と市場予想を上回ったが、前期から減速した。補助金による消費に買い疲れが見られ、若年層の高失業率や米中関係悪化への懸念が消費を抑制した可能性がある。外需は堅調だが、対米輸出は低迷し不安は残る。固定資産投資は不動産投資が低迷続きで、製造業にも陰りが見られる。こうした中、中国政府の15次5ヵ年計画での対応に注目したい。
中国7-9月期の実質GDP成長率は成長目標の5%を小幅ながら下回った
中国国家統計局は10月20日に7-9月期のGDP(国内総生産)を発表した。実質で前年同期比4.8%増と、市場予想の4.7%増は上回るも、4-6月の5.2%増から減速した(図表1参照)。GDPの約4割を占める消費の停滞が押し下げ要因だった。
同日に発表された9月の主要月次経済指標では、小売売上高が前年同月比3.0%増と市場予想とは一致したが、8月の3.4%増を下回り、内需の弱さが示された。一方、工業生産は9月が前年同月比6.5%増と、市場予想の5.0%増、8月の5.2%増を上回った。9月の固定資産投資は年初来前年比で0.5%減と、市場予想の0.1%増、8月の0.5%増を下回り、低迷している。
底堅い外需を受け工業生産は堅調だが、内需の不振で小売売上高は軟調
中国の7-9期GDP成長率は1年ぶりに5%台を下回るなど伸び悩みが明確となった。この背景は消費の停滞など9月の月次データに反映されていると見られよう。月次データの内容を確認する。
小売売上高は足元、5月に前年同月比で6.4%とピークを付けてから4ヵ月連続で減速している(図表2参照)。主な背景として倹約や消費疲れが挙げられる。中国当局が5月に発表した修正版(最初は2013年)の「党・政府機関節約奨励・浪費反対条例」(いわゆる「倹約令」)を受けた接待などの自粛が、外食産業の下押し要因となっている。
補助金で押し上げられた家電製品や自動車は足元で明確に伸び悩んでおり、買い疲れが見られる。
また、調査失業率は安定しているが、消費のけん引役である若年層の失業率が6月(14.5%)を底に上昇に転じ、8月は18.9%と高水準だったことも気がかりだ。米中貿易摩擦の先行きが不透明なことが、投資や消費への抑制要因となっていると見られる。9月30日に発表された9月の非製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.0と、前月の50.3を下回り、好不調の境目の50となった。同指数は消費マインドを反映する傾向があるが、中国では10月に大型連休があった。10月末に発表予定の10月のPMIデータに注目したい。
一方、9月の工業生産は、市場予想、前月を上回り堅調だった。中国の9月の輸出の伸びが前年同月比で8.3%増と、8月の4.4%増を大幅に上回り堅調だったことが生産活動を支えたと見られる。工業生産の中身を見ると、ガラスやセメントなど建設関連は軟調なままだが、堅調な外需を受け産業AI機器や、新エネルギー車、一部の機械は好調を維持している。
もっとも、対米輸出の伸びは前年比で大幅なマイナスが続いている。アジアや欧州など相手先を分散して輸出を確保している状況で健全とは言い難い。今後、米中貿易摩擦の影響で中国の工業生産が左右される展開も想定した方がよさそうだ。
固定資産投資は9月が年初来前年比で0.5%減とマイナス圏に落ち込んだ(図表3参照)。不動産投資は依然として低迷しており、押し下げ要因となっている。そのうえ、製造業やインフラ投資も鈍化傾向で、9月はともに前月の伸びを下回った。
部門別にみると、公的部門の投資は1.0%増と、プラスを確保した一方で、民間部門は3.1%減とマイナスを記録した。民間部門のマイナスは4ヵ月連続で、民間による投資の不振が続いている。
構成指数を見ると製造業が9月は4.0%増と前月の5.1%増を下回った。中国では過剰生産による過当競争(いわゆる内巻)が問題となっている。これが大きく注目された1つの例は、今年5月に中国大手自動車企業が電気自動車(EV)を最大30%超値下げすると発表したことなどが挙げられる。この例が示す背景には地方政府による生産設備の過剰な誘致などもあるようだ。中国の中央政府は過剰生産をある程度抑制する方向にかじを切ったことが製造業投資不振の背景とみている。
内憂外患の中国で開催される4中全会、当局の方針に注目したい
中国の消費の回復は鈍く過剰生産の問題にも直面している。一方、外需は堅調ながら先行きに不安もある。こうした中、中国では2026年~30年の経済・社会運営の基本方針となる15次5ヵ年計画を議論する第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)が20日に開幕した(23日閉幕予定)。前回の4中全会(14次)では中国は世界の工場として、2035年にGDPを中等先進国並みにする目標を掲げた。当時も米中対立は始まってはいたが、現在とは比較にならないうえ、不動産問題などは当時は深刻ではなかった。
今回の4中全会では経済については内需の押し上げや不動産問題、米中貿易摩擦など直面する問題への対応方針が示される可能性が考えられる。通例ならば、最終日に討議内容をまとめたコミュニケが発表され、後日詳細が公表される運びだ。今回の4中全会における当局の発表を注視する必要がありそうだ。
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