新興国投資編(5)資源価格の動向と新興国経済への影響 | ピクテ投信投資顧問株式会社

新興国投資編(5)資源価格の動向と新興国経済への影響

資源価格の動向と新興国経済への影響

足元で資源価格、特に原油価格が大きく下落したことで、新興国経済への影響が懸念されています。新興国の中でも資源輸出国は経済の悪化が懸念されますが、資源輸入国は経済的な恩恵を受ける可能性があります。資源価格が下落したから新興国経済も悪いと結論づけるのではなく、新興国それぞれの経済の特徴も考えていく必要があります。

資源価格の動向

新興国の経済を考える上で、資源価格の動向は重要です。なぜかと言いますと、新興国の中には、経済活動の大きな部分を資源産業に依存する「資源国」がたくさん含まれるからです。また、それは新興国の国土が世界の国土面積の大半を占めているから、とも言えます。というわけでまず、資源価格の動向から確認していきたいと思います。

ひとことで資源と言ってもその種類はまさに多種多様ですが、代表的な資源の一つに原油が挙げられます。足元のWTI原油先物価格は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う世界の経済活動の急激な縮小やOPECプラスによる協調減産の交渉決裂などが要因となり、大幅に下落しました(図表1)。また、2008年のピークから、長期の下降トレンドが続いています。その要因は、シェール革命と呼ばれる米国のシェールオイル産出技術の進化により米国における原油産出量が大きく増加したことや、世界的な脱化石燃料化の動きなどがあげられます。このように原油価格は、供給量が増加したことや代替エネルギーの台頭により、2008年のピークから下降トレンドを継続している状況です。

原油だけではなく、銅や石炭の価格も今回、同様の動きとなっています(図表2)。「産業の血管」とも呼ばれる銅は、産業インフラ構築に欠かせない金属資源ですが、新型コロナウイルス感染症の影響によりインフラ投資が滞るとの懸念から下落しました。石炭に関しては、火力発電の主な燃料であることから、経済活動の停滞により電力の使用量が減少することが予想され、下落しました。また、世界的な環境問題に対する意識の高まりから、石炭を使用する火力発電から再生可能エネルギーへの転換が進み、石炭の需要が減少しているという構造的な要因もあります。

新興国経済への影響

それでは、資源価格(原油価格)が新興国経済にどのような影響を与えるか考えていきたいと思います。

IMFが2020年6月に発表した世界経済の見通しでは、世界全体の2020年の成長率は、2019年12月時の予想の3.3%から−8.2%の下方修正となる、−4.9%との予想となりました。2021年については、2020年の急激な落ち込みの反動もあり、5.4%の成長が予想されています(図表2)。また、先進国の経済成長については、2019年12月時点では1.6%の成長を予想していましたが、−9.6%下方修正し、2020年は-8.0%としています。一方、新興国経済は、2019年12月時点の4.4%の予想から、今回-7.4%の下方修正を行い、2020年は−3.0%と予想としています。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大による需要の大幅な減少を伴う金融・経済への影響は、「原油需要減退による原油価格の下落で新興国経済に打撃」という表現から想起されるような、新興国だけがダメージを受けるわけではなく、先進国も同様であり、むしろ経済活動の落ち込む度合いは先進国のほうが高い予想となっていることが分かります。

また、新興国も資源輸出国と資源輸入国に分けることができ、資源価格の下落が与える影響も異なります。たとえば、新興国を原油純輸出国と原油純輸入国に分けると(図表3)、原油純輸出国は、貿易収支や財政の悪化など経済にとってマイナスですが、逆に原油純輸入国は貿易収支の改善や個人消費の活性化などが期待され、経済にとってプラスに働きます。

このように、資源価格が新興国経済に与える影響は一様ではなく、それぞれの新興国によって異なる点に注意しなければなりません。

中国の経済構造の変遷

最後に、新興国経済の代表格である中国の経済構造の変遷についてみていきたいと思います。

中国は、1970年代後半から1990年代にかけて市場の解放を徐々に進め、市場経済を取り入れてきました。それによって、農業や鉱業といった第一次産業の比率が下がり、製造業や建設業といった第二次産業が経済の牽引役となりました(図表4)。1990年代後半からは、第二次産業が頭打ちとなる中、金融や不動産といった第三次産業が台頭し、新たな経済の牽引役となります。また、近年ではテンセントやアリババといったIT企業が台頭し、IT産業が経済成長のドライバーの一つとなっています。

このように中国の経済構造は段階的に変化しており、農業や製造業といった労働集約的な産業から、先進国と同様に、金融やIT産業などの知識集約的な産業への転換が進んでいます。また、既存のインフラが整備されていない新興国においても、新たな技術サービスによって一足飛びに知識集約的な産業が誕生する、リープフロッグ型の経済発展も見られます。

資源価格が新興国経済に与える影響

中国の例で見たように、新興国の経済構造は大きく変化しており、新興国経済全体で見れば、資源価格の動向が新興国経済全体に与える影響は限定的であると言えます。特にアジアにおいてその傾向は顕著であり、韓国や台湾といった、先進国に引けを取らないIT輸出国も存在します。

新興国は資源国の集合体でもなければ、似たような国の集まりでもありません。多種多様な国の集まりであり、だからこそ、分散投資が重要かつ有効なアプローチであると言えるのではないでしょうか。

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