Article Title
世界株式投資戦略 「攻めは最大の防御」ではない理由
田中 純平
2019/11/15

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

スポーツや経営など様々な分野で「攻め(攻撃)は最大の防御」と言われる。守りにまわらず積極的に攻撃することが一番の防御であることを意味するが、投資の世界では必ずしも当てはまらない。その理由は、意外にも足し算と掛け算の違いにある。



Article Body Text

投資をするうえで覚えておきたい投資リターンの計算方法

株価が100円の個別株に100万円投資したと仮定しよう。予想に反し株価が50円まで半減し(投資リターンは-50%)、評価額が50万円になった場合、当初の100万円の元本まで回復するには何%のリターンがその後必要になるだろうか?答えは+50%ではなく+100%、つまり2倍のリターンが必要になる(<100万円÷50万円>-1=100%)。50%損したからといって50%取り戻せば良いという足し算ではない(50万円に投資リターン+50%を掛け算しても50万円×1.5=75万円にしかならない)。投資リターンを計算するには単純な足し算ではなく、掛け算が必要になる。そうなると単純にリスクを上げてリターンを上げるという攻めの戦略は、投資の世界では通用しなくなる。リスクを上げて大損してしまうと、取り返しがつかなくなってしまうからだ。

長期投資では大損するリスクを極力抑え、複数の株式で分散投資することが肝要

世界で3番目の富豪と言われるウォーレン・バフェット氏は、投資でその財を築いた著名投資家の一人だ。
そのバフェット氏の投資原則の中で有名なのが「【ルール1】 絶対に損をしないこと。【ルール2】 ルール1を絶対に忘れないこと」である。もちろん投資の世界で絶対に損をしないことなどあり得ないのだが(実際バフェット氏も過去に損失を出している)、筆者なりにバフェット氏の投資原則を解釈すると、前述した投資リターンの計算方法と重なる部分があると考える。つまり、過度なリスクを取って大幅な損失を出してしまうと、元本回復まで相当な時間と期待リターンが必要になるので、適切なリスク管理が重要になるということだ。

図表1はリスクの違いによる回復ペースをイメージで示したものだ。リスクの低い株式Bは5年目で元本が回復したが、リスクの高い株式Aは9年目だ。回復期のリターンは株式Aのほうが2倍高いわけだが、回復までの期間も2倍近く長くなっている。長期投資をするうえでいかに大負けをしないことが重要かがご理解頂けたはずだ。それでは、適切なリスクとはどれくらいの水準を指すのだろうか?

筆者は十分に分散投資された世界株のリスク値であれば概ね適切な水準だと考える。図表2では参考までに複数の銘柄に分散投資された世界株価指数と世界株の代表的な個別銘柄のリスク値を示した。ご覧のとおり世界株価指数は15%であるのに対し、個別銘柄は24%~30%だ。長期投資をすれば必ず不測の事態に遭遇するもの。分散投資を行ってリスク管理を徹底したい。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当、新興国株式にも精通する。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場をカバー。レポートや動画、セミナーやメディアを通じて投資戦略等の情報発信を行う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBCに出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


岸田政権による次の重点政策

議事要旨に垣間見る、QTのこれまでと今後

米国の長期金利に上昇余地

原油高と物価高が引き起こす米国株の地殻変動