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ECB、金利は下げられなくても、手段は残る 梅澤利文 欧州/ユーロ圏

財政政策拡大観測などを背景に、ユーロ圏の利回りは急上昇(価格は下落)していました。しかし、18日に公表された新たな救済策を受け、国債市場は若干落ち着きを取り戻しました。ECBの救済策が従来よりは踏み込んだ対応と判断したためと見られます。もっとも、新型コロナウイルスの感染拡大は特に欧州で悪化が続いており、当面変動の高い状態が想定されます。

ECB:新型コロナウイルスによる経済低迷への対策に、資産購入プログラムを公表

 欧州中央銀行(ECB)は2020年3月18日(日本時間では19日朝方)、新型コロナウイルスの感染拡大に対応し、7500億ユーロ(約89兆円)相当の新たな臨時の資産購入プログラム(パンデミック緊急購入プログラム、PEPP)を導入すると発表しました(図表1参照)。

 ECBのラガルド総裁はPEPP導入の発表後にツイートし、マンデート(責務)の範囲内で、ECBの政策手段を最大限活用する決意を表明、「ユーロへのわれわれのコミットメントに限界はない」と強調しました。

どこに注目すべきか:PEPP、CP、財政政策、GDP成長率、感染動向

 財政政策拡大観測などを背景に、ユーロ圏の利回りは急上昇(価格は下落)していました。しかし、18日に公表された新たな救済策を受け、国債市場は若干落ち着きを取り戻しました。ECBの救済策が従来よりは踏み込んだ対応と判断したためと見られます。もっとも、新型コロナウイルスの感染拡大は特に欧州で悪化が続いており、当面変動の高い状態が想定されます。

 まず、PEPPの概要を振り返ります。PEPPの規模は20年末までに7500億ユーロは少なくとも購入し、新型コロナウイルスの感染拡大状況により必要ならば、ネットで購入を継続する意向も述べています。PEPPの停止時期を柔軟にすることで不退転で取り組む構えを示しています。

 なお、7500億ユーロはユーロ圏の名目GDP(国内総生産)の6%を上回る規模です。イタリアやフランスなどが既に表明している追加の財政政策(国債発行を伴う)を概ね吸収できる規模と見られます。

 次に、PEPPは従来の資産購入プログラム(APP)などで購入対象となった資産に加えて、新たに投資対象が拡大されています。例えばギリシャ国債が購入対象となっています。また、社債プログラム(CSPP)の購入対象に非金融企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)が含まれました。企業の資金繰り緩和が期待されます。

 さらに、購入額にも工夫が見られ、購入額を毎月一定にする必要は無く(図表1は一定額を仮定)、ECBの判断で必要なときに購入額を増やす柔軟さに対応できそうです。

 それでも、購入額が不十分な場合はどうするのか? ECB政策委員会のメンバーであるビルロワドガローフランス中銀総裁は、救済基金である欧州安定化メカニズム(ESM)の稼動を提案しています。ESMの活用は、ECBによる国債などの購入拡大に道を開く可能性も検討している模様です。

 ESMは意見表明の段階ですが、このような方策まで視野に入れる必要があるほど、ユーロ圏の経済は(一時的に)落ち込む可能性があります。今後、国際通貨基金(IMF)などから経済成長見通しの公表が出揃うと思われますが、報道などから数%のマイナス成長が想定されます。マイナス幅に対応して財政政策、国債購入を変動させる展開が想定されます。今回の政策で財政を補うECBの役割は明確となりましたが、やはり感染の動向が目下の最大の注目点と見ています。

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