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環境変化確認編⑩~分散投資の重要性を再確認する~
2025/07/30

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概要

急激な相場変動によりボラティリティが高まる状況下で市場に参加し続けるためには、分散投資の重要性を再認識し、適切なポートフォリオ構築を検討する必要があります。




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■急激に高まったボラティリティ

今回はVIX指数を参考に直近の金融市場を振り返りながら、分散投資の重要性を改めてご説明いたします。VIX(Volatility Index)指数とは米シカゴ・オプション取引所(CBOE)がS&P500種株価指数を対象とするオプション取引の予想変動率(インプライド・ボラティリティ)を基に算出する指標で、この数値は投資家の市場に対する心理状態を反映します。投資家の買いのマインド(投資家心理)が強い場合には数値は低下し、逆に売りのマインドが強い場合には数値は上昇します。そして、数値の上昇が著しく高くなる場合には市場がパニックに陥っていると考えられます。数値の具体的なイメージとしては、平時は10~20で推移しますが、強い不安やストレスがかかると20以上に上昇、40を超えるとパニック状態に陥っているとみなされます。

2024年を振り返ると(図表1)、8月に入ってからVIX指数が上昇し、5日には一時60を超え(終値ベースでは38.57)、米国株式のみならず世界の株式市場が大きく調整しました。たとえば、日経平均株価は7月31日の終値が39,101.82円でしたが、8月5日時点での終値は31,458.42円となりました。このときの要因としては主に米国の景気減速への警戒感、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に対するマーケット参加者の不信感などがあげられます。しかしながら、その後、短期間でVIX指数は落ち着きを取り戻し、株式市場においてもパニック状態が継続することはありませんでした。実際に日経平均株価は翌9月末には一時39,000円台を取り戻しました。

その後も同年12月に再び30に近づき、そして2025年3月から4月にかけて、トランプ新政権による関税政策などへの不透明感や改めて景気減速が意識される展開となりVIX指数は再び急上昇し、4月8日は終値ベースで52.33を記録しました。米国株式市場はダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合指数の3指数が下落、特にナスダック総合指数はダウ工業株30種平均やS&P500種株価指数に比べて大きく調整しました。日経平均株価も再び31,000円台を記録しました。

2025年7月14日時点でVIX指数は10~20の間を推移しており、世界の株式市場も短期でリバウンドし、高値を取り戻しています。米国の景気減速懸念や日本も含めた先進諸国の財政問題および金融政策の不透明感は現在も金融市場が抱える課題として残ってはいますが、一旦は投資家心理がパニック状態から脱し、平時の状態を保っているといえます。


図表1:VIX指数の推移
(日次、2024年1月1日~2025年7月14日)


出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

■市場に参加し続けるための分散投資

ここまでの振り返りから、一時的に市場がパニック状態に陥ったとしても、すぐに投資している資産を投げ売るのではなく、長期目線を崩さずに市場に参加し続ける(長期投資を実践する)ことの必要性がわかります。しかしながら、たとえばポートフォリオが株式もしくは株式ファンドのみで構成されている場合、その値動きは大きくなるため、最近の相場変動のように短期的に含み損が拡大すると、投資マインドが崩れやすくなり長期投資を実現することが難しくなる恐れがあります。したがって、市場に参加し続けるためには、いかなる相場においても投資を挫折することがないように、どの程度の損失率なら許容できるかをあらかじめ確認し、そのリスク水準に合わせたポートフォリオを構築する、つまり分散投資を実践することが重要だといえます(図表2)。分散投資によってリスクを抑えることで、資産全体の値動きを小さくすることが期待できます。

確かに株式単体で長期投資を行うほうが高いリターンを獲得できる可能性はあります。リーマン・ショック後、大規模な金融緩和政策に支えられた世界的な株高、ドル高・円安をうけ、外国株式への投資割合が増加している個人投資家の方々も多くなっています。しかしながら、既述のとおり、高いリターンが期待できる資産はその分リスクも高く、リターンのバラつきが大きいため、場合によっては想定外に大きい損失を被る可能性もあります。実際に含み損が発生したとき、投資を継続できるかどうか、どの程度の損失であれば耐えられるかどうかを再確認し、適切なポートフォリオを構築することで市場に参加し続けることが重要と考えます。                                        

図表2:S&P500種株価指数と分散投資ポートフォリオのパフォーマンス推移
(月次、2023年12月末~2025年6月末、2023年12月末を100して指数化)


日本株式:TOPIX、米国株式:S&P500種株価指数、世界国債ヘッジ:FTSE世界国債指数のリターンから米ドル/円の1か月フォワードレートで算出する簡便的なヘッジコストを差引いて計算、金:ロンドン市場金価格、指数は全てトータルリターン
※分散投資ポートフォリオは月次リバランス、過去の売買実行可能性および売買手数料、税金等の費用は考慮していません。すべて円ベース。 
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

       


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