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米国株式市場の潮目を変えた3つの要因
田中 純平
2020/05/15

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概要

NYダウは5月11日(月)から5月13日(水)にかけて3日続落となり、年初来安値であった3月23日(月)からの強烈なリバウンド基調に変化の兆しが表れている。米国株式市場の潮目が変わりはじめたきっかけとしては、3つの要因が挙げられる。



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「楽観」から「悲観」へ振れた1週間

1つ目の要因は米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長の発言だ。米国で複数の州が経済活動再開に向けて動く中、12日の米上院公聴会でファウチ所長は、都市封鎖の解除を急げば感染がさらに拡大し、経済回復を妨げる可能性があると議会に警告した。1918年から1919年にかけて大流行し、世界で約4000万人の死者が出たと言われるスペイン・インフルエンザでは、感染流行の第1波よりも第2波のほうが死者数が増加した事例があるため、新型コロナ対策チームの主要メンバーであるファウチ所長の発言は、マーケットに緊張感をもたらした可能性がある。2つ目の要因は米中対立だ。大統領選挙を今年11月に控えるトランプ大統領は、新型コロナの感染拡大を巡り中国への非難を繰り返している。米国上場の中国企業に対する監視強化が検討されているほか、連邦職員向けの確定拠出年金を運営する連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB)が中国株への投資を延期すると13日に発表するなど、中国に対する圧力を強めている。米中対立が貿易やIT覇権争いにとどまらず、金融市場へ波及することをマーケットは警戒している。3つ目の要因は、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が13日に行った講演だ。パウエルFRB議長は景気の先行きについて極めて不確実だとし、第2次世界大戦以降のどの不況よりもはるかに悪いと表現した。また、景気回復が勢いづくまで時間がかかる可能性があり、時間が経過すれば流動性の問題が支払い能力の問題に変わりかねないと警告した。

 

 

米国株式市場のけん引役だった量的緩和の拡大ペースも鈍化

NYダウの上昇をけん引したFRBの量的緩和拡大ペースは足元で鈍っている。金融市場が落ち着きを取り戻しつつあることが背景にあるわけだが、景気回復まで時間がかかれば「流動性」問題は「支払い能力」問題へ飛び火する。FRBは企業が借入をしやすくする「流動性」問題には対処することは可能だが、企業が借入返済を行う「支払い能力」問題には対処できない。米国株式市場の先行きを見通す上では、新型コロナ感染終息までの「時間」がカギを握ることになる。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
投資戦略部長

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。日経CNBC「朝エクスプレス」、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、BSテレビ東京「NIKKEI NEWS NEXT」に出演。週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載中。日本経済新聞やブルームバーグではコメント多数引用。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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