- Article Title
- 米国によるイラン攻撃の行方
米国とイスラエルはイランへの本格的な軍事行動に入った。最高指導者のアーリー・ハメネイ師が殺害され、ドナルド・トランプ大統領はイラン国民に蜂起を呼び掛けている。もっとも、体制の転換を目指すには地上軍の投入が避けられず、相当なリスクを負うことになろう。米国は、最終的に外交的な解決を目指すのではないか。日本経済への影響を含め、この衝突は冷静に見る必要がある。
■ 攻撃は外交交渉へのステップ
オマーンを仲介にイランと交渉を続けつつ、トランプ大統領は武力行使に踏み切った。外交は、米国にとって、アラビア海に展開する空母『エイブラハム・リンカーン』に続き、空母『ジェラルド・フォード』が地中海東部へ到着するまで、時間を稼ぐ意図だったのかもしれない。米国が誇る空母打撃群は、イランを東西で挟撃している(図表1)。
昨年6月、イスラエルによるイランへの攻撃で始まった『12日戦争』との大きな違いは、今回はハメネイ師の殺害に踏み切ったことだ。トランプ大統領は、トルゥース・ソーシャルへ投稿した動画で、イラン国民へ「我々の攻撃が終われば、あなた方の出番だ」と語り掛けた。つまり、イラン国民による体制転換に期待を示したのである。
2024年12月18日、シリアのバッシャール・アル=アサド大統領(当時)が亡命した。反政府勢力が3週間程度で首都ダマスカスへと迫ったのは、同大統領を支えていたイスラム教アラウィー派が、人口構成では10%程度に過ぎない少数派だったことが背景ではないか(図表2)。国民の70%以上がイスラム教スンニ派と見られ、少数特権階級による支配には反発があったようだ。
一方、イランの場合、国民の90%以上がイスラム教シーア派の教徒であり、人種的にもペルシャ人が60%程度を占める。西側諸国の制裁で物価が高騰、現体制への不満が高まっていたとしても、イラン国民がシリアと同じように動く保証はない。仮にトランプ大統領がイランの体制転換を目指すのであれば、大きなリスクを負って地上軍を投入することが求められるだろう。
11月の中間選挙を控え、リスクを最小限に限定しつつ、イラン攻撃の成果を誇示したい同大統領としては、最高指導者を排除した上で、新たな指導者との交渉へ移行するベネズエラ型の対応を考えていると見られる。つまり、イランのポスト・ハメネイ師が誰で、どの程度政権を掌握して米国との交渉に臨めるか、それが次の焦点と言えそうだ。
■ 1970年代と比べ大きな変化
イランがイスラエルのみならず、ペルシャ湾岸のサウジアラビア、カタールなどを攻撃したことで、実質的にホルムズ海峡は封鎖状態になった。もっとも、価格が上昇すれば、世界最大の産油国になった米国には、原油、天然ガス共に大きな生産余力がある。金融市場における目先のリスクオフは避けられないものの、短期間の封鎖なら世界経済への影響は限定的ではないか。
一方、日本の場合、2025年の中東地域からの原油輸入量は全体の94.0%に達した(図表3)。もっとも、最大の調達先はUAEであり、主力の積出港であるフジャイラ港はホルムズ海峡の外側である。また、LNGに関しては、豪州産が39.7%を占め、中東産は10.8%に過ぎない。
さらに、第1次石油危機下の1975年、『石油備蓄法』が制定された。その結果、石油については、足下、国家備蓄が平均的な消費量の146日分(IEA基準で123日分)、民間備蓄101日分(同85日分)あり、産油国との共同備蓄分を合わせると254日分(同214日分)が確保されている。ホルムズ海峡の封鎖が長引いても、数ヶ月程度であれば、備蓄の取り崩しで十分に対応できるだろう。
2010年代に入って、シェール革命を成功させた米国が世界最大の産油国になるなど、エネルギーを取り巻く環境は、2度の石油危機に見舞われた1970年代とは大きく変化している。イラン情勢は金融市場にとり重大な懸念材料ではあるが、冷静に事態の推移を見守る姿勢が求められよう。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。