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- 中東混迷下での金の考え方
ホルムズ海峡が実質的に封鎖され、原油が上昇する一方、有事に強いはずの金の価格は調整した。急騰直後だけにリスクオフの換金売りに押された上、一部の国が通貨下落に対応して金準備を取り崩しているのだろう。そうした現象は第1次、第2次石油危機でも見られた。もっとも、中長期的に考えれば、金は国際社会の分断、インフレリスクに対するヘッジ機能を有するのではないか。
■ 有事で下落した「有事の金」
米国、イスラエルがイランへの攻撃を開始した直後の3月2日、金はニューヨーク市場において終値ベースで1oz=5,322ドルの史上最高値を付けた(図表1)。もっとも、その後はむしろ下落に転じ、3月26日には高値から17.8%安の4,376ドルとなっている。「有事の金」が有事の下で下落したのは、リスクオフによる換金売りが背景だろう。
ドナルド・トランプ大統領が就任して以降、今年3月2日まで、金のスポット価格は96.9%上昇した。同大統領が進めた関税や不法移民対策は、基本的にインフレの要因だ。基軸通貨ドルへの信認が揺らぐなか、金は国際的に通貨価値下落のヘッジ手段とされたのではないか。また、価格上昇に伴い、短期的な資金も流入したと見られる。
しかし、中東情勢が不透明感を増すなか、足の速い投機的な資金は、キャッシュ化を急いだ可能性が強い。さらに、自国通貨の下落に直面して、一部の国が金準備を取り崩し、貿易決済などに向け資金の確保を急いだことも背景と考えられる。
1970年代から80年代初頭の第1次、第2次石油危機の際、当初、金価格は大きく上昇した。しかし、どちらも危機の途中で調整に転じたのである(図表2)。足元と同様の展開だった。
■ 国際社会の分断とインフレ
2度の石油危機の後、1991年12月に旧ソ連が崩壊、東西冷戦が終焉した。米国主導のグローバリゼーションの下、国際的なサプライチェーンの統合が進み、中国、ASEAN諸国など新興国が工業化するなか、世界的な物価安定により、金は数あるコモディティの1つになったと言えよう。
もっとも、20年間にわたる長期的な調整局面を経た金の価格を底入れさせたのは、2001年9月の米国における同時多発テロ事件だ(図表3)。国防省本部、世界最大の金融都市ニューヨークが標的になり、米国の覇権は大きな転機を迎えた。
2008年9月には大手投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻、FRB、日銀など主要中央銀行が大量にマネーを供給したことにより、通貨価値下落へ種がまかれたと言える。加えて、2020年からの新型コロナ禍の下での歴史的な金融緩和は、世界的なインフレへの背景に他ならない。さらに、2022年2月、ロシアがウクライナへ侵攻、金価格が新たな上昇局面へ入る起点になったと言えよう。
今回の米国、イスラエルによるイランへの攻撃が世界経済に衝撃を与えたのは、低コストによりホルムズ海峡が実質的に封鎖され、エネルギー消費国が軒並み石油、天然ガスの調達に苦労しているからだ。エネルギーの安定供給確保は、依然、国際情勢を大きく左右しているのである。
一方、ワールドゴールドカウンシルによれば、減少傾向にあった各国の金準備が増加に転じたのは、2009年4-6月だった(図表4)。高度経済成長を遂げた中国が、人民元経済圏を視野に入れた上で、金準備の積み上げを図ったことが要因だろう。
米国とイランによる交渉の行方は予断を許さない。ただし、決着の如何にかかわらず、イランの現体制が続く場合、ホルムズ海峡は、国際社会にとって不安定要因の1つであり続けると想定される。
また、米欧の対立で北大西洋条約機構(NATO)の存続が危ぶまれるなど、欧州の地政学的リスクにも飛び火した。外貨準備としてドルを保有するリスクが高まり、金への置き換えが続くのではないか。
国際社会やサプライチェーンの分断は、構造的なインフレの要因だ。長期的に見れば、ヘッジ手段として、金は最も有力な投資対象の1つだろう。
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