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- 中東情勢次第となった米国の金融政策
日米首脳会談は日本にとり無難な結果だったが、ドナルド・トランプ大統領は、高市早苗首相の訪米に関しトルゥース・ソーシャルへの投稿を見送った。ホルムズ海峡の実質的封鎖でエネルギー価格が急騰、同大統領の支持率は低迷している。一方、3月17、18日のFOMCで、金融政策は中東情勢次第であることが確認された。日米首脳会談を前向きに評価できる状況ではないのだろう。
■ 日米政府で異なる高市訪米の評価
日米首脳会談において、高市首相は、トランプ大統領に対し、停戦前のホルムズ海峡への自衛隊派遣は困難であることを説明した上で、厳しい要求、批判を受けなかった。これは、日本政府にとり、想定された範囲で最も良い結果だったと言えるのではないか。ただし、3月23日現在、同大統領は高市首相の訪米をトルゥース・ソーシャルへ全く投稿していない。これは異例と言えるだろう。
イランによるホルムズ海峡の実質的な封鎖により、先週末、ガソリン価格は2022年8月以来の高水準となった(図表1)。エネルギー価格の高騰を受け、市場が織り込む期待インフレ率も3.90%へと上昇している(図表2)。他方、リアル・クリア・ポリティクスの集計では、トランプ大統領の支持率は、2期目に入って最低水準に落ち込んだ。
スペインなど欧州の多くの国が米国によるイランへの攻撃へ批判的な姿勢を示しているのに対し、高市政権は法的な判断を慎重に避けてきた。国際社会で孤立しつつあるトランプ大統領は、日本の対応に関し一定の評価をしていると見られる。
もっとも、11月の中間選挙を睨み、同大統領は、国民が納得する一定の成果を挙げた上で、イランとの停戦を模索しているだろう。この点に関し、自衛隊の派遣も含め、日本が何か貢献出来る可能性は極めて低い。トランプ大統領にとり、現時点での日米首脳会談の重要度は高くなかったのではないか。従って、同大統領は、国民向けアピールの場として最も重視してきたトゥルース・ソーシャルへの投稿を見送ったと見られる。
■ 利下げの前提は原油価格の安定
17、18日のFOMCでFRBは政策金利を据え置いたが、19名の参加者による2026年末のFFレートの想定水準を見ると、トランプ大統領に近いスティーブン・ミラン理事ですら、昨年12月時点での2.00~2.25%から、2.50~2.75%へ2ノッチ引き上げざるを得なかったようだ(図表3)。ジェローム・パウエル議長は、FOMC後の会見で、中東情勢によるエネルギー価格の高騰が経済に与える影響に関し、率直に「誰にも分らない」と指摘、利上げを検討する可能性を否定しなかった。
結果として、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が担保付翌日物調達金利(SOFR)から算出した市場の織り込むFFレートの誘導水準を見ると、早期利下げへの期待は大きく後退している(図表4)。
一方、パウエル議長は、翌19日、アメリカ行政学会の年次総会でポール・ボルカー公共誠実賞を贈られ、ビデオメッセージで「持続的な物価安定の実現のため、短期的な圧力に屈しなかったボルカー氏の姿勢は、真の公共奉仕を特徴づける勇気と長期的な視点を示した」と語った。ボルカー氏は第2次石油危機の混乱のなかFRB議長に就任、強烈な引き締め策でインフレを鎮静化させたことで知られる。パウエル議長は、政治的圧力に屈しない強い決意を改めて示したのだろう。
他方、トランプ大統領が次期議長に指名したケビン・ウォーシュ氏は、連邦議会上院による承諾が得られていない上、民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員により、ジェフリー・エスプタイン氏のファイルに名前があるとの指摘を受けた。
パウエル議長は、自身への刑事捜査が決着するまで、FRB理事を退任しない意向も示しており、金融政策を巡るトランプ大統領のシナリオは実現が遠退いている。少なくとも原油価格が落ち着くまで、利下げは困難だろう。イラン問題の出口を早期に見付けられない場合、トランプ大統領の政治的苦境がさらに深まる可能性が高まったと考えられる。
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