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- 高市外交の真価を問われる訪米
高市早苗首相は、3月19日、ドナルド・トランプ大統領との首脳会談に臨む。この訪米は、対中政策の擦り合わせ、日米貿易合意の再確認が主要議題のはずだった。しかし、米国、イスラエルによるイランへの攻撃で状況は激変している。トランプ大統領が、イラン攻撃への明確な支持、ホルムズ海峡への自衛隊派遣を求める可能性は否定できない。高市首相は外交力を問われるだろう。
■上昇する原油価格と迫る中間選挙
ジョー・バイデン前大統領が躓いた理由の1つはガソリン価格だった。就任時に1ガロン=2.69ドルだったが、新型コロナ禍から経済が正常化する過程でのサプライチェーンのボトルネックにより、2022年6月には5.47ドルへと上昇している(図表1)。それに連動してバイデン大統領(当時)の支持率は急落、一時40%台を割り込んだ。
バイデン政権のインフレに対する無策を厳しく批判、返り咲いたトランプ大統領だが、イランがホルムズ海峡を実質的に封鎖し、米国ではガソリン価格が再び急上昇している。11月の中間選挙へ向け、神経質にならざるを得ないだろう。
3月11日、国際エネルギー機関(IEA)に加盟する32ヶ国が備蓄する4億バレルの石油放出を決めた。もっとも、原油価格の急騰下にあった2021年11月、バイデン大統領(当時)は米国の戦略的石油備蓄の放出を決め、その量は2億6千万バレルに達したが、価格への影響は限定的だった(図表2)。ホルムズ海峡の実質的な封鎖状態が長期化するリスクに直面する現状において、持続的な効果があるとは考え難い。
トランプ大統領は、14日、トルゥース・ソーシャルへ投稿、中国、英国、フランスなどに加え、日本にもホルムズ海峡への艦船派遣に期待を表明した。事実上、海峡を航行するタンカーの護衛を求めたと見られる。もっとも、防御の難しい短距離から攻撃を受ける可能性があり、米軍艦船も同海峡内には立ち入っていない模様だ。トランプ大統領の要請に応じるのは非常に難しいだろう。
■肯定するか?否定するか?
国連憲章第2条は、加盟国に威嚇を含め武力の行使を禁じている。何等かの事態に対しては、安全保障理事会(安保理)が武力を用いない措置を決定、それで不十分なら安保理が改めて武力行使を含む対応策を決議する決まりだ(図表3)。例外は加盟国が武力攻撃を受けた場合で、個別的・集団的自衛権の発動が容認される(図表4)。
今回の米国、イスラエルのイランへ攻撃が、国連憲章に沿うものか否か、国際社会の評価は必ずしも定まっていない。スペインのペドロ・サンチェス首相は、「国際法違反」と断定、米軍がイラン攻撃のため同国内の基地を使うことを拒否した。
19日の日米首脳会談において、トランプ大統領は、高市首相にイラン攻撃への全面的な支持に加え、自衛隊の中東への派遣を求めることも考えられる。これに高市首相が異を唱えれば、中国との関係改善にメドが立たないなか、米国との間にも亀裂が入る可能性は否定できない。その結果、対米貿易など経済面にも影響が出るだろう。
一方、受け入れる場合、米国、イスラエルによるイラン攻撃の法的判断を求められることになる。さらに、紛争地域への護衛艦派遣は、治安維持を目的とした自衛隊法に基づく海上警備行動では困難ではないか。事態対処法に基づく存立危機事態と認定する場合、米国、イスラエルの攻撃が国際法上合法であることが前提のため、そう判断した根拠を明確にする必要に迫られよう。
高市首相が3月中の訪米を希望したのは、トランプ大統領の訪中が4月に予定されており、その前に日米間の対中政策を擦り合わせることが目的だった。また、連邦最高裁が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置を違法と判断したなかで、日本企業に不利益が及ばない対応を再確認する意味もあったと見られる。しかし、米国、イスラエルのイランへの攻撃で状況は一変した。高市首相は、外交手腕を問われることになりそうだ。
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