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- 圧勝した高市首相の難敵
高市早苗首相は、大きな賭けに勝った。自民党の議席獲得率は、結党以来24回の総選挙で最高水準に達している(図表1)。政権を安定させた高市首相は、「責任ある積極財政」へ自信を深めるだろう。ただし、最大の難敵は金融市場ではないか。総選挙で公約した消費税減税を実行すれば、財政への中長期的な懸念が高まり、意図せざる長期金利の上昇、円安を招く可能性が強い。
■賭けに勝った高市首相
読売新聞が1月9日に解散の可能性を報じた際、厚い組織力を持つ公明党と袂を分かったこともあり、ここまでの自民党の圧勝は予想できなかった。「高市人気」が背景と見られ、解散・総選挙を決断した高市首相は大きな賭けに勝ったと言える。
連立与党は、参議院では過半数に満たない。ただし、憲法第59条4項は、一般法案に関して衆参両院で異なる議決をした場合、もしくは参議院が60日以内に議決を行わない場合、「衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる」としている。それだけに、自民党が衆議院で3分の2を超えた意味は重要だ。政権は安定し、政策は円滑に実行されるだろう。
■消費税減税のインパクト
今後、高市首相にとっての最大の難敵は、金利、為替市場なのではないか。
昨年12月26日に閣議決定した2026年度予算案は、一般会計が過去最大の122兆3,092億円だ(図表2)。今年度の補正予算も18兆340億と新型コロナ期以外では最も大きく、高市首相が掲げる「責任ある積極財政」のうち、「積極財政」部分を強く印象付けている。
さらに、今回の総選挙に当たり、主要政党が軒並み消費税減税を公約したなかで、高市首相率いる自民党、そして連立を組む維新の会は、2年間の限定ながら、食料品の非課税化検討を掲げた(図表3)。1月26日に日本記者クラブで行われた党首討論会で、同首相は、「2026年度内を目指したい」と時期を示している。もっとも、財源については、総選挙後に立ち上げる国民会議で検討するとしており、選挙戦を通じて具体論には踏み込んでいない。
ちなみに、2026年度政府予算案において、消費税は26兆6,880億円を占める最大の税財源だ。食料品への非課税化で5兆円の減収が想定され、その財源を見出すのは容易ではないだろう。
また、2027年4月から実施する場合、2029年3月に期限切れとなる。2028年7月に参議院選挙がある上、次の衆議院解散の時期と重なる可能性が強く、実質増税となる食料品への課税を再開するのは、政治的にかなり難しいのではないか。
昨年10月4日、高市首相が自民党総裁に就任した後、長期金利は大きく上昇、円は対ドル、対ユーロで下落した(図表4)。日米協調介入は、ドル急落により米国のインフレを招きかねないだけに、トランプ政権にとってハードルは低くない。
日銀の政策金利が期待インフレ率を下回る状況下、財政への懸念から日本国債が売られ、連動して円安が進めば、輸入物価主導によるコスト・プッシュ型のインフレが続く可能性がある。つまり、物価対策としての消費税減税は、むしろ物価高を招くリスクがあるのではないか。「責任ある」積極財政の真価が問われるだろう。
一方、株式市場は、先週末の米国市場の大幅高に加え、自民党の圧勝による高市政権の安定を好感して、目先は上昇局面となることが想定される。もっとも、1月中旬以降、報道各社の世論調査で自民党の優勢が伝えられており、総選挙はある程度織り込まれていたのではないか(図表5)。
むしろ、長期的なインフレへの観測、コーポレートガバナンスの構造的変化こそ、日本株の持続的な上昇の原動力と考えられる。やや長い目で見た場合、戦略性を欠く財政政策が、国債や為替市場を動揺させ、株価にネガティブなインパクトをもたらすリスクを念頭に入れておくべきだろう。
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