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高市首相の解散で政権選択選挙へ
市川 眞一
2026/01/15

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概要

1月23日の通常国会冒頭、高市早苗首相は衆議院を解散する見込みとなった。自民党結党以降、1月の解散は1回しかない。次年度予算の審議が大幅に遅れるからだ。「経済最優先」を掲げてきただけに、このタイミングでの解散はサプライズと言える。高い内閣支持率に加え、国際情勢の緊迫が背景だろう。ただし、野党による連携の動きも加速、選挙の帰趨を予測するのは極めて難しい。



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■ 背景は高支持率、国際情勢

1955年の自民党結党後、衆議院解散は22回あった。このうち1月は1990年の1回に止まる(図表1)。1-3月中の解散が稀なのは、次年度予算の審議に大きく影響するからだろう。1990年の場合、1990年度予算の成立は6月4日になり、暫定予算に加え、暫定補正予算を余儀なくされた。




「経済最優先」を掲げてきた高市首相が通常国会冒頭の解散を決断した背景には、高い内閣支持率があると見られる(図表2)。加えて、1月3日に米国がベネズエラへ武力介入したこと、同6日に中国がレアアースの対日輸出に関する規制強化を発表したこと・・・の2点があるのではないか。




米国のドナルド・トランプ大統領は、キューバやコロンビアなど左派、中道左派が政権を握る中南米諸国への威嚇のみならず、デンマーク領グリーンランドを力により領有する可能性を示唆している。国際情勢が緊迫化した場合、高市首相が国民に信を問う機会を失う可能性は否定できない。

また、昨年11月7日の衆議院予算委員会において、高市首相は、台湾海峡で米軍が攻撃を受けたケースのみならず、台湾そのものが武力攻撃を受けた場合、事態対処法上の存立危機事態に該当するとの趣旨で答弁した。これは、従来の政府見解とは異なる印象が強く、通常国会で審議が行われれば、野党側から整合性に関して厳しく問われる可能性があった。

そうした状況を総合的に勘案、高市首相は、極めて限られた側近と解散を判断したと見られる。多くの自民党幹部も寝耳に水だった模様だ。

■ 鍵を握る立憲・公明連携への評価


通常国会冒頭解散は高市首相が仕掛けたサプライズだが、それに触発される形で、野党側にもサプライズが生まれつつある。立憲民主党と公明党が総選挙へ向け急速に連携を強化していることだ。



1999年以降、自民党は公明党と連立を維持してきた。総選挙の際には、公明党が小選挙区で自民党候補を支援する一方、自民党は公明党が候補を擁立した小選挙区及び比例代表区で公明党に票を流すバーターがあったと言われる。



2024年10月の総選挙では、自民党の小選挙区における総得票数は、同党の比例代表区の総得票数を629万票上回った(図表3)。公明党の場合、比例代表区の得票は小選挙区より523万票多い。約500万票程度が、公明党支持層から小選挙区の自民党候補へ投じられたと推測される。

各小選挙区における比例代表区での公明党票を自民党候補から控除してシミュレーションすると、無所属を含む自民党系候補の当選者は、実際の選挙の197名から142名に減少した(図表4)。さらに、公明党が立憲民主党と完全に連携した場合、自民党の獲得議席は120議席程度になる。



もちろん、これは飽くまで過去の結果によるシミュレーションだ。報道各社の世論調査によると、高市首相は保守層、若年層から強い支持を得ており、直近の国政選挙で参政党や国民民主党に流れていた票が、自民党に回帰する可能性がある。

また、立憲民主党と公明党の俄かな連携が、有権者に受け入れられるかも未知数だ。旧民主党、公明党などが1994年に結党した新進党は、内部対立などからわずか3年で解党した。

ただし、立憲、公明両党が本格的に連携する場合、今回の総選挙が名実共に政権選択選挙となることは確実だ。サプライズが2つ重なっただけに、結果を読むのは難しい。ほぼ確実なのは、各陣営は、有権者の支持を獲得する上で、競って積極財政政策を打ち出さざるを得ないことである。


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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