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日本株の行方
市川 眞一
2026/01/27

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概要

国内における高市早苗首相の解散・総選挙への決断、立憲民主党、公明党の新党結成、海外ではドナルド・トランプ大統領によるグリーンランド領有への野心など、新年の日本株は外部環境のサプライズに大きく揺さぶられた。こうした時こそ、むしろファンダメンタルズを重視すべきではないか。日本株は趨勢的な上昇過程にあると考える。理由は、インフレと上場企業のガバナンスの変化だ。



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■ インフレ下で拡大する企業収益

2021年以降、日本株は新たな上昇局面に入った。最大の理由は、日本経済がデフレからインフレに転じたことだろう。消費者物価指数と日経平均を重ねると、バブルが崩壊した1990年代以降、強い連動性を示している(図表1)。




デフレ下では、一般に企業の売上高が減少するため、全く新たなビジネスを生み出さない限り、他社のシェアを奪うか、コストの削減が利益を伸ばす主な方法だ。シェア争奪には価格競争が王道である上、リストラは限界があるため、結局、利益水準の低迷が株価を停滞させた。




長期的に考えれば、利益成長には売上高の増加が欠かせない。デフレ期は逆の現象が起こり、売上高と利益の縮小均衡が構造化したのである。

一方、2021年以降は円安主導のインフレ期に入り、国際展開している上場企業の利益が円建てで拡大し易くなった。さらに、今は日本国内でも価格転嫁が進みつつある。結果として、上場企業の予想1株利益(EPS)が伸びたことにより、株価が押し上げられたと言えるだろう(図表2)。

日経平均の予想株価収益率(PER)を見ると、2021年末は日経平均2万8,791円で18.0倍、足下(1月23日現在)は21.8倍だ。PERが100倍に達した1980年代後半と異なり、バリュエーションの評価が極端な水準になったわけではない。株価上昇は理論的に説明できるようになった。

総選挙へ向けた主要政党の公約には、軒並み消費税の減税が明記されている。一方、財源を明確に示した政党はない。インフレ下のリフレ的政策が、円安を加速させ、企業の利益を押し上げることで、株価上昇の要因となる可能性がある。ただし、長期金利の上昇には注意が必要だ。


■ 意識される上場のコスト



世界主要市場における株主資本利益率(ROE)と株価純資産倍率(PBR)の間には、非常に強い正の相関関係が成立している(図表3)。つまり、株価は国際的に合理的な基準で形成されており、日本の長期的な株価停滞は、デフレと共に低い資本リターンも要因であったことは明らかだ。



もっとも、日本の上場企業の間では、近年、株式持ち合いの解消が急速に進んだ。つまり、上場企業の経営者は、株主総会で与党として機能してきた安定株主を失いつつある。投資の果実を求める新たな株主は、低ROEによる企業価値(≒株価)の低迷を容認しないだろう。上場企業の経営者は、1)ROEの向上を図る、2)MBOによって上場市場から撤退する、3)高く買ってくれる身売り先を探す・・・の3つの選択肢から、経営方針を選ばざるを得なくなるのではないか。

今年に入ってまだ1ヶ月足らずだが、久光製薬によるMBO、大平洋工業のTOB成立が報じられた(図表4)。アクティビストが株主総会で影響力を行使し、海外の企業が日本企業の戦略的買収を検討するなかで、上場企業の経営者は、上場することのコストを実感していると見られる。



2月8日に投開票が行われる総選挙の結果を予測することは極めて難しい。仮に政権交代になれば、「高市トレード」を支えた期待が収縮し、株価が一時的に大きく下落する可能性もある。

ただし、それで日本株に対して悲観的になる必要はないだろう。上昇ペースの問題はあるにしても、日本株を取り巻く環境は、株式投資にとってポジティブな方向へ向かっていると考えられるからだ。


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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