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- 関税敗訴 トランプ大統領の次の一手
米国連邦最高裁判所は、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とするドナルド・トランプ大統領の関税に違憲との判断を示した。同大統領は、通商法122条を活用、150日間に亘り税率15%の関税を課し、その後は通商法301条による恒久課税化を図る意向のようだ。もっとも、真の問題は、関税が米国経済に恩恵をもたらしたかだろう。税収以外、良い効果があったとは言えそうにない。
■ 今後は通商法122条から301条へ
連邦最高裁は、今回の判決において、関税を含む課税権は、原則として議会が持つことを確認した上で、法律が大統領に例外的な関税の課税権限を明確に付与しているかに焦点を当てた。その上で、9名中、6名の判事が、IEEPAには関税の規定がなく、課税は違憲と判断したのである。
昨年1月の就任後、トランプ大統領が導入した関税のうち、相互関税、フェンタニル関税はIEEPAが根拠法だ(図表1)。通商拡大法232条に基づく自動車・同部品、鉄鋼・アルミニウムへの個別関税以外、米国政府は24日に課税を中止する。
一方、最高裁判決後に会見を行ったトランプ大統領は、通商法122条によって、国・地域を問わず10%の課税を行うと明言した。さらに、翌21日には、トルゥース・ソーシャルへ「米国を搾取してきた国には」、「即座」に「15%を課す」と投稿したが、それがいつからなのか、特定の国のみ15%になるのかなど、不透明な点が少なくない。
ただし、まず、150日間の期限がある通商法122条を適用し、その後、今年7月にも通商法301条へ移行することで、切れ目なく看板政策である関税を継続する意向は明確になった(図表2)。
ちなみに、『不公正貿易慣行からの救済』策を示した通商法第3編には301~310条が含まれ、全体を総称して「通商法301条」と呼ばれる。通商代表部(USTR)が利害関係者の求めに応じて調査を行い、外国政府の行為が不公正、制限的であると判断された場合、米国政府は12ヶ月以内に関税を含む制裁措置を講じることができる。
■ 代替策で凌ぐも問題は効果
トランプ関税が本格的に始まった昨年4月から今年1月まで、関税税収は2,690億ドル、前年同期を2,015億ドル上回った(図表3)。ペンシルバニア大学ウォートン校の財政モデルチームによれば、IEEPAにより納付された関税は1,750億ドルに達する。つまり、トランプ関税は、財政に大きく貢献した。今後、還付を求める裁判が多発する見込みであり、それは米国の財政に大きく影響しよう。
一方、関税の納税義務者は米国の輸入事業者であり、最終的には価格転嫁され、消費者の負担となる可能性が強い。つまり、実質的な間接税だ。
トランプ大統領は、ジャイール・ボルソナロ大統領に対する禁固刑への不満などから、昨年7月30日、ブラジルへ40%の追加関税を課し、同国の相互関税率は50%に達した。結果として、米国では牛肉、コーヒーの価格が高騰し、中低所得層の消費者の不満が高まっている(図表4)。
結局、昨年11月14日、トランプ大統領は、特定の農産物を相互関税から除外する大統領令に署名した。リアル・クリア・ポリティクスによる主要世論調査の集計では、同大統領の支持率は低下を続けている(図表5)。11月の中間選挙へ向け、政権内で危機感が高まっても不思議ではない。
もっとも、”Tariff man”を自称するトランプ大統領にとり、関税政策を放棄するのは政治的に不可能だろう。また、関税税収は重要な財源になった。IEEPAによる課税は司法により阻止されたが、通商法122条、301条など代替策により、関税政策を継続すると見られる。ただし、これまでのような恣意的、恫喝的な課税は難しくなるのではないか。
他方、相互関税率15%を前提に5,500億ドルの対米投資で米国と合意した日本政府が、この連邦最高裁判決で姿勢を変えることは困難ではないか。安全保障面で日米連携は極めて重要な上、通商拡大法232条に基づく自動車・同部品、鉄鋼などへの個別関税を課される懸念があるからだ。
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