Article Title
岸田政調会長が号砲を鳴らす「ポスト安倍」レース
市川 眞一
2019/10/18

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

岸田自民党政調会長が次期自民党総裁選の立候補へ強い意欲を見せた。これを契機に、自民党内では「ポスト安倍」へ向け後継者争いが本格化する可能性がある。安倍首相にとり、石破茂元自民党幹事長と小泉進次郎環境相の連携は好ましくないシナリオではないか。それを念頭に入れつつ、衆院解散と自らの去就を考えることになろう。



Article Body Text

岸田氏が口火を切ったポスト安倍レース:有力候補は7名と言われるが・・・

10月10日発売の『文芸春秋』でインタビューに答えた岸田文雄政調会長は、次の自民党総裁選挙へ立候補する強い意欲を示した。これまで、2回、総裁選で安倍晋三首相と戦った石破茂元自民党幹事長が常に再挑戦を掲げていることを除けば、「ポスト安倍」へ向け明確な意思表示をしたのは岸田氏が最初だろう。

現在、一般に次期自民党総裁、即ち内閣総理大臣の候補者とされているのは岸田、石破両氏に加え、菅義偉官房長官、茂木敏充外相、河野太郎防衛相、小泉進次郎環境相の7名だ(図表)。このうち、派閥を率いているのは、岸田氏と石破氏の2人に止まる。

自民党総裁選挙は、支える国会議員の数と結束の両方が必要だ。2001年4月の総裁選で「一匹狼」と言われていた小泉純一郎元首相が不利な下馬評を覆して橋本龍太郎元首相を破った際にも、実は清和会(森派:現在の細田派)が全面的にバックアップしていた。

従って、7月の参議院選挙で派閥に属する4名の現職を失った岸田氏だが、次期総裁への可能性が消えたわけではない。むしろ、いずれの派閥にも属していない菅官房長官、小泉環境相は、この点でハンディキャップがある。また、河野防衛相も、所属する志公会(麻生派)の支持は得難いと見られ、ハードルは高いだろう。

安倍首相周辺が恐るシナリオ:石破・小泉2位、3位連合

2018年9月の総裁選は、安倍首相と石破元幹事長の一騎討ちだった。石破氏は、国会議員の投票で73票と安倍首相の224票に遠く及ばなかったが、党員投票では44.7%を得て善戦した。

次の総裁選挙が同様に自民党所属国会議員と党員投票で行われる場合、例えば石破氏と小泉環境相が共に立候補して決選投票で2、3位連合を組めば、それは大きな力になり得る。この2人は政治哲学・政策の両面で安倍首相とは距離があるだけに、同首相としては、そうしたシナリオは避けたいところではないか。

従って、国会議員投票のみで総裁選を行うことができる安倍首相の任期途中での退任シナリオが浮上する。

その場合、安倍首相との関係が強い岸田政調会長は、最も有力な候補の1人となるだろう。ただし、参議院選挙での失点を取り返すためには、岸田氏は強いリーダーとしての印象を再構築する必要がある。それが、文芸春秋のインタビューの背景と言えそうだ。

 

 

後継者争いは本格化へ:安倍首相が見極める解散のタイミング、自らの去就

第2次安倍政権が7年近く続き、政界においても「ポスト安倍時代」を想像するのは難しいようだ。しかし、岸田氏が口火を切ったことで、今後、後継レースは本格化する可能性がある。

安倍首相は、その流れを見極めながら、次の解散・総選挙のタイミング、そして自らの去就を慎重に検討することになるだろう。


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


岸田政権による次の重点政策

議事要旨に垣間見る、QTのこれまでと今後

米国の長期金利に上昇余地

原油高と物価高が引き起こす米国株の地殻変動