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リブラはなぜ脅威なのか?
市川 眞一
2019/11/01

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概要

旧仮想通貨に鷹揚だった各国通貨当局が、リブラには厳しい。背景は、積み立てられる準備金が巨大化、金融市場において国家に匹敵する力を持ち得るからと考えられる。リブラは規制できるかもしれない。しかし、中国が国家主導でデジタル通貨を発行すれば、米国も追随せざるを得ないだろう。金融機関の経営は大変革期を迎えた。



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リブラの威力:鍵はユーザーの広がりと準備金にあり

国の通貨に代わるデジタル通貨は容認できない。リブラは国の通貨と同じ義務を負うべきだ。
(7月18日ル・メール仏経済・財務大臣)

ビットコインなど旧仮想通貨が取引所から大量に流出した際、主要国政府は規制を強化したものの、新しい決済システムに鷹揚な姿勢を貫いた。しかし、6月18日にFacebookが「リブラ」の構想を発表して以降、日米欧通貨当局は極めて厳しい批判を繰り返している。 いかなる通貨にも連動せず、デジタル情報に価値の裏付けがない旧仮想通貨に対し、リブラは発行額と同額の準備金を積み上げることで、むしろ価格は安定し、投機性は低下する可能性が強い。それにも関わらず、何故、通貨当局はリブラを問題視するのだろうか?

鍵は、リブラ協会が管理するその準備金にあるのではないか。Facebookのアクティブユーザーは24億1千万、大雑把に言えば世界人口の3分の1に達している。その全てが仮に平均1,638ドル分のリブラを保有した場合、準備金の総額はFRBの資産規模を上回る計算だ(図表)。この運用は、国際金融市場に大きな影響を与え、G7やG20の財務省・中央銀行総裁会議ですら、リブラ協会を無視して実効性ある決定をできない可能性がある。つまり、リブラは、国家による通貨の独占的発行権、そして金融政策への挑戦に見えるのだろう。

先行する中国:通貨覇権の戦いは金融機関に自己変革迫る

リブラは規制で止められるかもしれない。しかしながら、中国は、人民銀行内にデジタル通貨研究所を発足させ、2020年中にもCDBC(中央銀行デジタル通貨)を発行する方向で準備している模様だ。これは専ら銀行向けだが、CDBCを裏付けとして銀行がデジタル通貨を発行、法定通貨と交換する二層方式により、この分野で世界に先行する狙いが中国にはあるだろう。

デジタル通貨で中国に主導権を握られた場合、既存の国際決済システムの枠外でRMBの存在感が高まる結果、米国の経済戦略は大きな影響を受けざるを得ない。 当然、米国も国家主導でデジタル通貨の開発に邁進することになるのではないか。リブラの問題は、最早、1プラットフォーマーへの懸念ではないだろう。通貨の覇権戦争の様相を呈しつつあるのだ。

また、デジタル通貨は金融サービスを大きく変えると見られる。例えば、邦銀はマイナス金利問題で店舗の縮小を進める一方、コンビニに設置されたATMの利用を奨励している。しかしながら、デジタル通貨が主流となる場合、最早、コンビニのATMですら不要だ。

技術の進歩による利便性の向上を長期的に規制で止めるのは難しい。仮にリブラ構想が頓挫しても、直ぐに次のリブラが出現するはずだ。当局も金融機関も、共に決断が求められている


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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