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- デフレ下で買われる金の不思議
一般にインフレ・ヘッジの手段とされる金の価格が、世界的な物価安定下でも高止まりしている。背景にあるのは、主要中央銀行の量的緩和の帰結が、将来、インフレ圧力につながるとの観測ではないか。さらに、「世界最大の消費地」を目指す中国は、デジタル人民元の価値を担保するため、金準備を積み増していると考えられる。
金価格:将来のリスクへのヘッジを象徴か
過去30年間の金価格を他の資産と比べると、安定して良好なパフォーマンスを示している(図表1)。
もっとも、足下、世界経済で懸念されているのは低い物価上昇率であり、日本はようやくデフレを脱したところだ。利息などキャッシュフローを生まず、インフレヘッジの役割を担うはずの金にとっては、本来、常識的には選好され難い経済環境と言えるだろう。
そうしたなか、金が買われている理由とされているのが、世界的な低金利と希少性だ。もっとも、利息収入がない以上、価格上昇を前提としない限り、低金利は金を保有する動機にはならない。希少性についても、数量に限りのある資産は他にも数多く存在する。
金価格が高止まりするファンダメンタルズ上の背景は、主要中央銀行の量的緩和、そして政府の財政赤字拡大が、長期的には大型のインフレをもたらすとの観測ではないか。その場合、どの国の通貨・資産もインフレヘッジとして決め手に欠けている。従って、国際的に共通の尺度で測ることができ、流動性も確保されている金が着実に選好されているのだろう。
注目される中国の動き:デジタル人民元の価値を金で担保か
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によれば、今年6月末における中央銀行の金保有量は、米国FRBが他を圧倒する8,133トン、時価で3,800億ドルを超える規模だ。世界最大の貿易赤字国は、借金の証文であるドルの信用力を確保するため、最強の軍隊、洗練された金融市場に加え、金の大量保有が必須なのだろう。
他の中央銀行に目を転じると、金準備を着実に増やしているのは中国とロシアだ(図表2)。まだ米国の4分の1程度だが、他国と明らかに異なる動きをしている。
中国は米国との通商戦争により、世界の市場では「売り手」より「買い手」が圧倒的に優位であることを再確認したと思われる。「世界の工場」から「世界最大の消費地」へ転換を図る上で、最強の軍隊、洗練された金融システム、そして安定した通貨が必要と考えている可能性は強い。金準備の拡充はその一環だろう。
近く発行が予想されるデジタル人民元の価値を金準備で担保するのが中国の戦略とすれば、今後も着実に保有量を増やすことが予想される。そうした中国の動きは、世界経済の長期的なインフレのリスクと共に、金の価格を押し上げる要因と言えるのではないか。
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