Article Title
原油価格 バイデン勝利なら上昇か!?
市川 眞一
2020/10/02

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

トランプ米大統領のシェールオイル生産推進策により、世界の需給バランスが崩れて原油価格は急落した。環境政策を重視するバイデン氏が大統領になれば、米国におけるシェール開発が抑制され、原油の需給関係は引き締まる可能性がある。極めて皮肉なことに、原油価格は、トランプ大統領再選なら停滞、バイデン氏勝利なら上昇するのではないか。



Article Body Text

シェール開発促進策:政策効果による意図せざる価格下落

トランプ大統領は、2016年の米国大統領選挙において、シェールオイル・ガスの開発を積極的に進め、米国をエネルギー輸出国とすることで、雇用の拡大を図ると公約した。それに沿い、トランプ政権の下では規制緩和が実施され、シェール開発が進んだ。結果として、米国の原油生産量は、同大統領の就任時における日量894万blから、今年2月には同1,310万blへ大幅に増加した(図表1)。

 

 

日量416万blに及ぶ米国の増産は、世界の石油需給に大きな影響を与えたと言えるだろう。米国内での過剰な供給が在庫の急増を招いたことで、原油価格急落の要因の1つになり、石油事業者を苦境に追い込んだ。もちろん、米国の需要者にとっては朗報であり、物価が安定してきた背景ではあるものの、意図せざる政策効果だったのではないか。

 

 

バイデン氏:地球温暖化対策に踏み込む

バイデン前副大統領は、今回の大統領選への公約として、地球温暖化抑止を柱の1つに据えた。具体的には、1)2050年までのゼロ・エミッション達成、2)温暖化抑止に10年間で1兆7千億ドルを投資、5兆ドルの民間投資誘発、3)EVの普及促進、4)大統領就任日におけるパリ協定への復帰‥などが柱だ。

米国では、環境政策が必ずしも選挙にプラスに作用しないとされるなか、かなり踏み込んだ内容と言えるだろう。近年、米国各地で自然災害が頻発し、足下もカリフォルニア、オレゴンなど西部において大規模な森林火災が発生している(図表2)。企業経営においてESGが重視されていることもあり、バイデン陣営は、地球温暖化問題に世論の注目度が高まっていると判断したのではないか。

 

 

両候補の環境・エネルギー政策:イメージとは真逆の結果を生む可能性

9月26日付けフィナンシャルタイムズ(電子版)は、『米国の石油グループの間でバイデン大統領の場合への不安後退』と報じた。バイデン氏が大統領に就任し、厳しい環境政策を実施した場合、原油生産が削減され、新たなシェール開発が規制される結果、世界的な原油需給が引き締まるとの観測を説明している。

石油業界は、極めて強い政治力を発揮してきた。バイデン氏の環境政策は、一見するとエネルギー産業には厳しい内容との印象を受ける。しかし、石油業界が不安視していないとすれば、価格上昇への期待が背景にあるだろう。原油価格は、エネルギー業界に理解のあるトランプ大統領再選なら停滞、環境重視のバイデン氏が勝利なら上昇・・・一般的なイメージとは真逆の結果を生む可能性がありそうだ。


市川 眞一
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら