Article Title
業績見通しの上方修正局面で注目すべき株式は?
田中 純平
2020/10/15

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

世界の企業業績見通しは回復基調にある。コンセンサス予想EPS(1株当たり利益)は、米国と欧州それぞれで底打ちの兆しが出ており、米・欧それぞれ緩やかな上昇トレンドとなっている。大方の予想通り、新型コロナウイルスのワクチンが来年供給されれば、コンセンサス予想EPSはさらに上方修正される可能性がある。そのような状況で注目すべき株式とは何か?



Article Body Text

予想EPSは底打ちから上昇トレンドへ

米国のコンセンサス予想EPS(12ヵ月先)は今年5月に底打ちし、欧州もその約1ヶ月後に底打ちした。その後は、回復ペースに差はあるとはいえ、米・欧ともに緩やかな上昇トレンドが形成されている。コロナショック後の世界の株式市場は実体経済と乖離した株高だと言われ、バリュエーションの拡大だけが相場をけん引する歪な状況が指摘されてきたが、足元ではようやく企業業績の回復に道筋が見えてきた。

欧米はこれから7-9月期決算の発表シーズンに突入する。7-9月期の予想EPS(前年同期比)は依然として「減益」が想定されているが、これは概ね織り込み済みであり、投資家の目線はすでに来年の「増益」に向かっている。2021年の四半期別増益率は米・欧ともにプラスに転じており、(今年の減益率が大きいため来年の増益率がより強調される「ベース効果」は否めないものの)新型コロナウイルスのワクチン供給による経済活動の回復をある程度前提としたモデルだと推測される。

 

 

業績見通しの上方修正局面で注目すべきは「景気敏感株」

新型コロナワクチンが来年供給されることになれば、消費/企業マインドの改善によって、経済活動はさらに活性化することが想定されるため、コンセンサス予想EPSの上振れ余地が出てくる可能性がある。

このような状況で注目すべきは「景気敏感株」だ。文字通り、景気に敏感な(左右されやすい)株式のことを指し、一般消費財サービスや資本財サービス、素材セクターなどに分類される株式が多い。これらの予想EPSは底からリバウンドしているとは言え、情報技術やヘルスケアと違い、まだまだ2019年12月末の水準を下回っている。よって、コロナ禍で競争上優位とされたGAFAMだけでなく、今後は経済活動の更なる再開を見越して景気敏感株が注目されても不思議ではない。

新型コロナワクチンの供給が遅れる可能性があることはリスク要因として認識すべきだが、遅かれ早かれ、景気敏感株の本格的な回復を織り込む局面に備えるべきだろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当、新興国株式にも精通する。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場をカバー。レポートや動画、セミナーやメディアを通じて投資戦略等の情報発信を行う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBCに出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


財政リスクは金利・為替市場に影響を与えるか

岸田政権による次の重点政策

議事要旨に垣間見る、QTのこれまでと今後

米国の長期金利に上昇余地

原油高と物価高が引き起こす米国株の地殻変動