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米国大統領選挙 最悪のシナリオは何か?
市川 眞一
2020/10/30

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概要

11月3日の米国総選挙では、大統領の他、上下院議員、州知事などが選出される。市場では、最悪のシナリオとして次期大統領が順調に決まらない事態を懸念しているようだ。しかし、12月14日の選挙人投票までには決着する可能性が強い。むしろ、真の懸念は大統領と議会、そして上院と下院がねじれる場合だろう。米国の重要政策が停滞しかねないからである。



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勝者が直ぐに決まらない場合:12月14日の選挙人投票日が目処

11月3日の投票は全米で538人の選挙人を選出するものだ。12月第2水曜日の次の月曜日、即ち今回は12月14日に選挙人による投票が行われ、1月6日に連邦議会で開票される。また、合衆国憲法修正第20条によれば、1月20日の就任日までに大統領が決まらない場合、副大統領が決まっていれば副大統領が大統領の職務を代行し、副大統領も決まっていないケースでは、連邦議会による立法措置により代行者を決めることになる。

 

 

トランプ大統領は、投票結果として自らの旗色が悪い場合、訴訟などを含めて徹底抗戦する意向を示唆してきた。選挙人投票の6日前までに一般投票の開票が確定している場合、法律上、連邦議会は当該州の選挙人が決まったと判断する。この規定を逆用、12月8日に一般投票の結果が確定していなければ、各州議会が改めて選挙人を選出するなど、奇策が検討されているとの報道も米国で相次いだ。

もっとも、そのようにして選出された大統領が米国の権威を背負っているとは考え難い。両陣営の訴訟合戦になって政治的収集が困難になるだろう。共和党、民主党の連邦議会幹部が、常識を外れた奇策を受け入れることはないと考えられる。

フロリダの票の集計で揉めた2000年の大統領選挙では、連邦最高裁が再度の票の数え直し禁止を命じたのが選挙人投票の2日前、アルバート・ゴア副大統領が渋々ながら敗北を受け入れたのは選挙人投票前日だった。この先例から、今回の選挙がもつれた場合は、12月14日が1つの節目と言えるだろう。

 

 

最悪のシナリオ:ねじれにより2年間の「決められない期間」

今回の総選挙において、大統領及び上下院議員の議席が順調に決まっても、大統領と議会、そして上院と下院が一致するのかねじれるのかにより、米国の政策運営のスピード感はかなり変わるだろう。例えば、ジョー・バイデン氏が大統領に就任する場合、政府高官をゼロから政治任用することになる。承認権を持つ上院で共和党が過半数を維持していれば、新大統領は議会との妥協を余儀なくされるだろう。トランプ大統領が再選された場合でも、両院を民主党に握られると、政策の遂行は相当に滞ると予想される。

市場の観点から考えると、大統領が誰かも重要だが、同時にこの連邦議会議員選挙の結果から目が離せない。大統領選挙がもつれてなかなか決着がつかない場合でも、2021年1月20日に新大統領が就任式を迎えられない事態に陥る可能性は低いだろう。だとすれば、選挙後の米国の政治の混乱はせいぜい1~2ヶ月のことだ。しかしながら、大統領と議会のねじれは、最短でも解消は2年後の中間選挙を経なければならない。

特に民主党は、リーマンショック後の10年間で政策が大きく左へ傾いた。仮にトランプ大統領が続投し、民主党が上下院で過半数を制した場合、大統領と議会の対立で米国の政策は何も決まらない状況に陥る可能性がある。このケースが、マーケットにとって最悪のシナリオなのではないか。


市川 眞一
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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