Article Title
上昇相場の3つのリスク
市川 眞一
2020/11/20

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

足下の東京市場は、米国大統領選挙の終了直後から急騰、ドナルド・トランプ現大統領が勝利した2016年の前回選挙と同様の上昇相場になっている。FRBの金融緩和継続、新型コロナへのワクチン開発が背景と言えるだろう。ただし、このマーケットには3つのリスクが存在するのではないか。それは、①新型コロナ感染第3波、②米国の政策決定の遅れ、③ドル安(円高)である。



Article Body Text

日米株価上昇の背景:金融緩和とワクチンへの期待

足下の東京市場では、日経平均が29年ぶりに2万6,000円台を回復、米国のマーケットと共に上昇局面となっている。これは、トランプ大統領が勝った2016年11月のマーケットを彷彿とさせる動きだ(図表1)。2016年は、新興国経済の失速が懸念されていたが、「トランプ次期大統領」による減税、インフラ投資への期待の高まりが株価を大きく上昇させた。

11月3日の米国大統領選挙はジョー・バイデン前副大統領が勝利したものの、トランプ大統領は結果を受け入れておらず、また上院では共和党が過半数を維持する可能性が強い。バイデン氏が選挙で主張した所得再分配のための「大きな政府」、その財源である大型増税は、いずれも実現のハードルが高いと言えよう。

一方、新型コロナは主要先進国において感染第3波に入っており、FRB、日銀、ECBは金融緩和を継続する見込みだ。ゼロ金利下でのマネーの大量供給は、株式のバリュエーションによる割高感を緩和するだけでなく、リスク性資産への投資を後押しして、株価上昇に貢献しているのではないか。

さらに、ファイザー、モデルナが相次いでm-RNAワクチンの開発で良好な途中経過を公表、新型コロナの収束に対するマーケットの期待が高まった。この金融政策とワクチン開発の複合要因が、日米の株価上昇の背景だろう。

 

上昇相場の3つのリスク:①新型コロナ、②米国の政治、③ドル安

日本株の今後を考える上で重要なことは、今のマーケットが流動性と期待に大きく支えられていることへの評価ではないか。ファンダメンタルズには不透明感が強いだけに、期待が崩れた場合、市場が逆回転する可能性は否定できない。リスクファクターは3つあると言えそうだ。

第1のリスクファクターは新型コロナの感染拡大である。米国では、新たに確認された感染者が連日のように過去最多を更新しつつあり、重症者・死者が急増の兆しを見せ始めた(図表2)。欧州主要国、日本でも感染拡大は明らかに第3波に入っており、世界経済や企業業績への影響が再び顕在化する可能性は否定できない。

第2には、米国における政策決定の遅れだ。トランプ大統領が敗北を受け入れず、政権移行の手続きは進んでいない。また、大統領と議会上下院のねじれにより、経済対策の決定に至るには長い時間が費やされると想定される。

そして第3はドル安の可能性だ。FRBによるゼロ金利と大量のドルの供給は、ドル安の要因になるだろう。円高は日本のデフレ圧力を強め、企業業績を下押しする要因だ。

この相場の先行きを考える上で、さらなる上昇シナリオを描くとしても、リスクファクターを念頭に入れる必要がある。市場の勢いに直面して、楽観的見方を手放し状態で受け入れるのは危険なのではないか。


市川 眞一
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。


●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら