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人事案に見るバイデン次期米大統領の姿勢
市川 眞一
2020/11/27

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概要

ジョー・バイデン米次期大統領が外交・安全保障に関わる閣僚クラスの人事案を発表した。また、ジャネット・イエレン前FRB議長が財務長官候補となる見通しだ。大物議員や実業家ではなく、実務に精通し、バイデン氏と共に仕事をした経験のある専門家が選ばれている印象だ。そうしたなか、ジョン・ケリー元国務長官の気候変動担当特使への起用が注目されよう。



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外交・安全保障:実務に長けた堅実な人選の印象

バイデン次期大統領は、11月24日、外交・安全保障関連の政府高官候補について、国務長官にアントリー・ブリケン元国務副長官、国家情報長官にアブリル・ヘインズ元CIA副長官、国家安全保障担当補佐官にジェイク・サリバン元副大統領国家安全保障担当補佐官などの名簿を発表した(図表)。いずれも関連する職務の経験者であり、バイデン氏と共に仕事をしたことのある専門家だ。派手な人事ではないが、大統領を支えるには堅実な人選と言えるのではないか。

米国においては、政府高官の多くが政治任用され、正式に就任するには、大統領が指名し、上院の承認を得る必要がある。上院はジョージア州の2議席が年明け1月5日に決選投票になったが、既に半数の50議席を確保した共和党が過半数を維持する可能性が高い。

現職のドナルド・トランプ大統領は、就任時、与党である共和党が上院の過半数を握っていたものの、高官候補の承認を得るのに苦労した。ワシントンの政界との関係が希薄だったため、候補者の人選に課題があったと言われている。一方、上院議員を36年経験した後、バラク・オバマ大統領に副大統領として8年仕えたバイデン次期大統領の場合、そうした点での懸念は少ないだろう。

 

イエレン前FRB議長:市場は財務長官指名を好感か?

経済関係の閣僚クラスは来週発表の予定だが、財務長官にはジャネット・イエレン前FRB議長の候補者指名が確実視されている。同氏は労働経済学者だが、オバマ大統領の下、FRB副議長から女性初の議長へ昇格した。ただし、通常、議長は1期4年、2期以上を務めるが、トランプ大統領は再任を認めず、2018年2月に退任している。

米国経済は新型コロナ禍により「雇用なき回復」局面に入った可能性が強い。そうしたなかで、財政政策と金融政策の一段の連携が重要とされている。雇用問題、金融政策の双方に明るいイエレン氏の財務長官については、適切な人選として歓迎するムードが市場では強いようだ。

金融政策に依存した財政:長期的に想定される2つのリスクとは?

中長期的に考えると、金融政策に依存した財政の肥大化は2つの大きな問題がある。1つ目の問題は、財政資金は経済のなかで生産性の低い分野に向かう傾向が強く、「大きな政府」は国の長期的成長力を阻害する可能性があることだ。

2つ目の問題は、何かを契機として物価が上昇した場合、日銀は国債の購入が難しくなることである。その際、財政は急激には縮小できず、国債の需給バランスは大きく崩れるだろう。結果として、国債と通貨(円)の同時下落となりかねない。

この2つの問題は、いずれも目先の経済に目に見える影響を及ぼすわけではない。しかし、3~5年先へ向けた資産運用を想定する時、戦略なき財政政策の負の側面を意識する必要があるのではないか。

 

ケリー特使:温暖化対策で米国が主導権を握る意図

今回の人事案で最も注目されるのは、ケリー元国務長官だろう。上院議員を28年務め、うち4年は外交委員長であった点はバイデン次期大統領の経歴と重なる。また、2004年の民主党大統領候補であり、オバマ政権では国務長官を務め、副大統領であったバイデン氏とオバマ大統領を支えた。民主党の重鎮の1人と言って間違いないだろう。

温暖化対策は、従来、コストとされてきた。しかし、世界の潮流は、新たな成長戦略の鍵を握るとの考えにシフトしている。大容量バッテリー、燃料電池(水素)、小型モジュール原子炉(SMR)などで技術的にリードすることが、国の産業競争力を高める上で極めて重要だ。自国に有利な国際ルールを設定できれば、その恩恵は極めて大きいと考えられる。

トランプ大統領は、米国の伝統である国際的なルール作りに背を向けてきた。一方、外交を得意とするバイデン次期大統領は、大物のケリー氏を担当特使とすることで、地球温暖化対策に関し、米国が主導権を握る意図なのではないか。


市川 眞一
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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