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アフターコロナ時代の新しい資産運用の考え方
塚本 卓治
2021/01/25

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概要

新型コロナウイルスにより落ち込む雇用や経済を支えるために、各国で大規模な財政政策と金融政策が実施され、債券の利回りは大きく低下した。これは資産運用に大きな影響を及ぼす。分散投資の基本であるバランス型ポートフォリオの期待リターンを押し下げるからだ。この問題に対応するには、株式や債券の中身を見直したり、今まであまり投資されてこなかった金や低リスク型ヘッジファンドなど、過去異なる動きをしてきた資産を組み合わせるという柔軟な発想が求められるのではないだろうか。



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アフターコロナ時代、世界国債の長期のリターン予想は円換算でマイナスに。従来型の資産運用には見直しが求められている

昨年を振り返ると、新型コロナウイルスにより落ち込む雇用や経済を支えるために、各国で大規模な財政政策と金融政策が実施された。その結果、世界の主要国の債券利回りは大きく低下し、今後期待できるリターンも大きく低下した。一方で株式においてもOECD加盟国の長期の生産性の動向を調べると低下傾向にあり、世界の企業業績は今年、そして来年と大きく回復が見込まれているものの、長期的な成長ラインは、徐々に低下傾向を見せている。

このように新型コロナウイルスの影響で様変わりした投資環境を受け、昨年、ピクテでは今後5年間、それぞれの金融市場がどれだけのリターンを示すのかという予想を発表した。

図表1に示されているように高いリターンが期待できるのは新興国を中心とした株式となっており、ヨーロッパや日本、スイス、などの先進国の株式も一桁台の半ば、そして世界株式全体では円換算で年率5%というトータル・リターン予想となっている。

一方で、債券については、世界的に対GDP比での公的債務残高が急拡大したことを受けて、人為的に低金利が続いていくだろうとの見方から、今後5年間のトータル・リターンは、米国やドイツの10年国債の場合、円換算でマイナス、世界国債も円換算で年率 -0.5%と予想している。

もう一つのカテゴリーとして、オルタナティブ(非伝統的)資産、ここにはゴールド、不動産、ヘッジファンドなどが含まれるが、例えば金の場合、ドルベースで年率7%、円換算で4.5%と比較的高いリターン予想となっている。

 

アフターコロナ時代の資産運用には、異なる動きをする資産を組み合わせるという柔軟な発想が求められる

図2はこうした市場見通しに基づき、現在の日本の投資家の置かれている状況を、リスク・リターンのイメージ図で示したものだ。伝統的資産である株式を30%、債券を70%組み合わせたバランス型運用の場合、債券と株式の期待できるリターンが低下することで、「以前の投資環境」で示した点から「今後の投資環境」で示した点へと(Aの矢印)、同じリスクをとりながらも、より低いリターンに甘んじなければならない時代がやってきていると考えている。

これに対して、かつてのようなリターンを求めて、Bの矢印のように株を増やそうとすると、確かに期待できるリターンは高くはなるものの、リスクも同時に増えてしまい、その結果ポートフォリオはより不安定になっててしまう。

 

そこでもう一つの考えは、リスクが増えすぎるのは困る、というのであれば、図3に示しているように、もっと新しい別の資産、伝統的資産に対して代替資産とよばれている、例えば金やヘッジファンドなど、投資家の皆様が今まで投資をしてこなかったであろう資産にも、対象を広げて分散投資をするという考え方だ(矢印C)。 こうした資産をポートフォリオの中に組み入れる事で、資産運用がより豊かになる可能性があると考えている。このような方法であれば、株を増やすような形でリスクを取らなくても、より高いリターンが期待できると考える。

 

今後待ち受けている投資環境を考えると、このようにより柔軟にポートフォリの見直しをしてゆく、株式や債券の中身を見直したり、様々な資産を組み合わせてゆく、これがアフターコロナ時代の新しい資産運用の考え方では、と考えている。

 


塚本 卓治
ピクテ・ジャパン株式会社
エグゼクティブ・ディレクター 運用本部 投資戦略部長

日系証券会社にて債券およびデリバティブ業務に従事した後、外資系運用会社および日系ファンド・リサーチ会社にて投資信託のマーケティングを担う。通算20年以上にわたり運用業界で世界の投資環境を解説。ピクテではプロダクト・マーケティング部長等を経て、現職。経験豊富なストラテジストが揃う投資戦略部を統括する傍ら、自らも全国の金融機関や投資家を対象に講演を行う。マサチューセッツ工科大学(経営学修士)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト


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