Article Title
訪日外国人の本格的受け入れ再開は2022年
市川 眞一
2021/03/19

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

菅政権は、今夏の東京オリンピック・パラリンピックについて、外国人観客を受け入れない方針を固めたようだ。10月に総選挙が見込まれるなか、その直前における新型コロナ感染拡大のリスクを避ける意図だろう。高齢者、基礎疾患のある人を除き一般国民のワクチンの接種は秋からになる可能性が強い。訪日外客の本格的な受け入れ再開は2022年以降になるだろう。



Article Body Text

ワクチン接種:一般健常者は秋以降か!?

現段階で日本政府が承認した新型コロナワクチンは、ファイザー製のみであり、アストラゼネカ、モデルナ製が承認申請を行った。厚労省などによれば、2回接種を前提とした場合、ファイザー7,200万人分、アストラゼネカ6,000万人分、モデルナ2,500万人分の調達を契約しており、合計すると1億5,700万人分で国民全体に接種可能な量だ。

河野太郎担当大臣は、3月12日の会見において、ファイザー製に関し5月に2,150万人分、6月はそれ以上が供給される見込みであると発表した。このスケージュールならば、3、4月分の846万人分と合わせ、5,200万人程度への接種を7月中にも終えることになる。先行接種が始まった医療従事者に加え、高齢者、基礎疾患のある人、高齢者施設の従事者への接種が一巡することになるだろう(図表1)。

 

もっとも、高齢者、基礎疾患のある人を除く一般国民への接種は、早くても今夏以降となる。また、ワクチンは世界で奪い合いになっており、日本政府の想定通りに調達できるのか、不透明感が完全に払拭されたわけではない。

さらに、新型コロナは、英国、ブラジル、南アフリカに加え、フィリピン由来の変異種が確認された。これら変異種は、従来型に比べて感染力が強く、重症化し易いとの見方があるなか、ワクチンの効果について検証が行われている。

既に国内でも変異種への感染、死亡が確認された。仮に変異種に対するワクチンの効果が明確となった場合でも、日本全体にワクチン接種が広がらなければ、海外との間で人の行き来を再開するのは極めて難しいだろう。

特に菅義偉首相は、衆議院の解散時期について、自らの自民党総裁としての任期満了に近い9月を想定、10月に総選挙が行われる可能性が強まっている。オリンピックは7月23日~8月8日、パラリンピックは8月24日~9月5日に行われる予定だ。この時期に大規模な訪日客を受け入れた場合、総選挙の時期に新型コロナの感染がピークを迎えている可能性は否定できない。そうしたリスクを考えれば、五輪に海外からの観客を受け入れることは現実的ではないだろう。

 

宿泊・飲食業界:淘汰や大規模な業界再編の可能性

2020年の訪日外客は411万6千人だった。もっとも、新型コロナの影響がほとんどなかった1月が266万1千人であり、4~9月は合計でも3万3千人に過ぎない(図表2)。入国規制を一部緩和した11月以降は月間4~5万人台のペースだ。五輪期間中は選手、大会関係者、メディア関係者などで多少の増加はあっても、年内はこの規模が続くのではないか。

 

2020年末、東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県において、従業員100名以上の宿泊施設は240であり、5年前と比べて45増加していた。もっとも、昨年の客室稼働率は31.4%に過ぎない。期待していた五輪需要が不発に終わり、2022年以降も劇的な稼働率の上昇が見込めないとすれば、飲食業なども含めた関連業界は、むしろ五輪後に淘汰や大幅な業界再編が避けられないだろう。


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


日銀、3月会合で示したことと、示さなかったこと

ホルムズ海峡封鎖の長期化観測  カーグ島の米地上部隊派遣は「最悪のシナリオ」か?

日本の25年10-12月期GDP上方修正と今後の展望

米・イスラエルのイラン攻撃と市場動向アップデート

米国のイラン大規模攻撃と市場の反応からの教訓

2月の東京CPIの内容確認と日銀金融政策の展望