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- 日本国債利回り急上昇の背景と今後の注目点
自民党の高市首相は、1月23日に衆院解散、2月8日投開票の意向を表明し、食料品の消費税減税を示唆した。国債市場では超長期国債の買い手不足や財政悪化懸念から利回りが急上昇した。12月の国債売買動向によると、海外投資家や信託銀行が主な買い手となる一方、生損保などは売り越しで買い手不足が鮮明だ。今後は選挙前に国債入札や日銀の金融政策、選挙動向が注目される。
日本超長期国債利回り、財政悪化懸念などを背景に利回りが急上昇
自民党の高市首相は1月19日に記者会見を開き、1月23日の通常国会冒頭で衆院を解散し、1月27日公示、2月8日投開票という意向を正式に表明した。主要政策の実現に向け政治の安定の必要性を訴えた。会見の中で、政策として、食料品を2年間消費税の対象にしない考えを示唆した。
財務省が1月20日に実施した20年利付国債入札は、投資家需要の強弱を反映する応札倍率が3.19倍と、前回の応札倍率の4.1倍、過去1年の平均である3.34倍を下回るなど弱い入札結果となった。財政悪化懸念などを背景に超長期国債への購入意欲が弱かったことを反映したとみられ、市場では国債利回りが急上昇した(図表1参照)。
日本国債の超長期セクターは足元で有力な買い手に乏しい
20日の日本国債市場では、満期までの期間が長い超長期債主体に利回りが急上昇し、2007年に導入された40年物国債の利回りは4%の大台に乗せた。定期的に発行され、発行金額がより大きい30年物国債も20日は前日比で0.25%程度と大幅に上昇した。一方で、日銀の金融政策を反映する傾向がある2年国債利回りの変動は限定的だった。利回り急上昇の原因が金融政策(利上げ)でないことは明らかだろう。
市場が警戒心を高めたのは、国内の超長期国債の買い手不足が懸念されていた中(図表2参照)、衆院選挙に向け与野党が消費税(食料品)減税で足並みをそろえたことから、財政悪化への懸念が高まったためと思われる。
日本国債の買い手を確認する、12月の利付国債売買動向を主な投資主体について、償還期間別(超長期「10年超」、長期「6年~10年」、中期「2年~5年」)にみると、図表2にあるように昨年12月月間の主な超長期国債の買い手は海外投資家と、信託銀行(含む年金勘定)などに限られた。買い手不足の印象がある。
銀行(都市銀行を集計)は、そもそも超長期国債の売買主体ではないが、12月は10年未満の国債を大幅に売り越している。11月までは買い越し主体であっただけに、日本国債全体の需給を考えると気になる動きだ。なお、図表2には含まれていないが地方銀行(含む信用金庫)は利付国債を買い越したが、超長期国債は売り越しだった。
信託銀行は12月が0.7兆円弱の購入超過と、11月に続き買い手となった。
海外投資家は超長期債を12月に1.2兆円買い越しており、主要な買い主体となった。利付国債全体でも3.7兆円の購入超となった。海外投資家は超長期債を10月は0.4兆円、11月は0.9兆円買い越していた。
超長期国債の有力な買い主体として思い起こされるのは生損保である。しかし生損保は12月に超長期国債を売り越した。25年度(26年3月期)決算から全ての生保会社に適用する健全性規制への対応を踏まえ購入意欲は乏しいようだ。
超長期債については安定的な購入先の購入意欲に陰りがみられる中、財政面の健全性を重視する投資主体には与野党が消費税減税を共に訴える現状に不安を覚えたのだろう。有権者がインフレに苦しむ中、消費税の食料品減税に意義はあるとしても与野党とも財源があいまいだからだ。野党には基金を作り毎年財源を捻出するというアイデアがあるが、そのような便利な投資が具体的には示されていない。自民党の2年という時限つき食料品減税は、本当に食料品の消費税率を2年後に元に戻せるのかなど疑問が残るうえに、財源は超党派の「国民会議」で議論する、という説明では不十分だろう。
超長期国債の利回り変動に落ち着きはみられるが、注目点は残されている
急激な国債利回りの上昇に対し、片山財務相が「市場を安定させるためのことはやってきているし、これからもやることは必ず約束できる」と述べ、市場の沈静化を図ったこともあり、21日の超長期国債利回りはやや落ち着いた動きとなっている。また、金利水準的にも、そろそろ落ち着くのではないかという感覚があるのかもしれない。しかし、金利急騰の原因に変化がない中、基本は様子見と思われる。では、当面何が注目されそうか。
政治サイドからの財政政策に関する情報発信は注目度は高いが、何が語られるかは予測しがたい。むしろ、選挙公示に向け発表が想定される獲得議席予想なども市場への影響がありそうだ。
国債市場の注目点としては、選挙前に予定されている長期債の国債入札に注目したい。1月28日には40年国債、2月3日には10年国債、 2月5日には30年国債の入札がそれぞれ予定されている。選挙動向などを踏まえた入札結果に注目が集まると思われる。
日銀の対応にも注目したい。日銀は1月22日-23日に金融政策決定会合(会合)の開催を予定している。今回の会合では政策金利の据え置きが見込まれるが、長期国債金利の動向が金融政策に与える影響について植田総裁が会見で何を語るかなどが注目されそうだ。日銀は国債購入額を減額しているが、減額ペースなどに影響はあるのかも注目したい。市場では国債購入オペに期待する声もある。植田総裁も長期金利上昇時のオペ活用に言及したことはあるが、利上げに伴う金利上昇が対象と思われる。財政悪化懸念による長期金利上昇まで含めてしまうのは、筆者の見解では、逆効果を懸念している。
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