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ニュージーランドとオーストラリアの金融政策の比較
梅澤 利文
2026/02/20

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概要

ニュージーランド準備銀行は2月18日の会合で政策金利を2.25%に据え置くことを決定し、景気回復や労働市場の回復の遅れから緩和姿勢を維持した。一方、オーストラリア準備銀行は利上げを実施し、足元で両国の金融政策は対照的だ。豪中銀は年内追加利上げが見込まれる一方、 NZ中銀は当面据え置く公算だが、インフレ率が見込み通りなら、26年末から来年前半に利上げ開始が予想される。




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ニュージーランド中央銀行の据え置きは全体的にハト派的なトーン

ニュージーランド準備銀行(NZ中銀)は2月18日開催の金融政策委員会(会合)で、政策金利を市場予想通り、2.25%で維持するとの決定を発表した。据え置きは全員一致だった。NZ中銀は前回会合(2025年11月)までは3会合連続で利下げを行っていた。今回の政策金利の据え置きは4会合ぶりとなる(図表1参照)。

NZ中銀は声明文で「緩和的な状態を当面維持する」との表現で、政策金利を当面据え置くことを示唆した。NZ中銀の発表を見ると、景気認識については低金利と堅調な輸出に下支えされ回復の途上にあると指摘した。また労働市場の回復の遅れも据え置きを支持する要因となったようだ。

ニュージーランドと地理的に近いオーストラリアは一足早く利上げを決定

NZ中銀の発表内容は総じてハト派(金融緩和を選好)寄りだった。NZドルは昨年末から堅調に推移していたが、NZ中銀の金融政策の発表を受けNZドル売りがみられた。

NZ中銀の足元のハト派姿勢は、近隣のオーストラリア準備銀行(豪中銀)とは対照的だ。豪中銀は2月2日~3日に開催した理事会で、市場予想通り政策金利を0.25%引き上げ、3.85%とすることを決定した(図表2参照)。利上げは23年11月以来となる。豪中銀は17日、今回の理事会の議事要旨を発表し、利上げの背景として物価上昇圧力の高まりや雇用市場の改善を受け、金融政策の焦点が雇用から物価へシフトしたことを指摘するとともに、インフレ動向次第では追加利上げの可能性があることを示唆した。

豪経済は、鉱物資源に強みを持つことから、昨年後半の資源価格全般の上昇を背景に回復傾向だ。一方、NZ経済は、乳製品など食品の輸出に強みを持つが、景気回復は遅れている。両国の足元の経済動向について、失業率を通じてみると、1月の豪失業率は4.1%と前月と同水準で、昨年後半頃から概ね低下傾向だ(図表3参照)。

一方、NZの失業率は25年10-12月期が5.4%と前期の5.3%を上回った。NZの一部重要な経済データ(失業率やインフレ率)は更新頻度が四半期毎であるため、やや古い情報ではあるが失業率が上昇する中では利上げに舵を切りにくいだろう。

もっとも、求人件数など高頻度データで26年の労働市場の動向を見ると回復の兆しは見え始めている。NZ中銀は個人消費の回復が鈍い背景として労働市場の回復の遅れを指摘している。NZ中銀は低金利政策を当面は維持して労働市場の回復を待つものと思われる。

ニュージーランドのインフレは鈍化傾向だがペースは鈍いとみられる

豪中銀は日本を除いた先進国の中で、一足早く利上げに踏み込んだ。NZ中銀は当面政策金利の据え置きが見込まれるが、年末、または遅くとも来年前半には利上げが想定される。この点について、NZのインフレ動向から確認する。

ニュージーランドの25年10-12月期の消費者物価指数(CPI)は前年同期比3.1%上昇と、市場予想、前期(ともに3.0%上昇)を上回った(図表4参照)。NZ中銀のインフレ目標(1~3%)の上限をわずかではあるが上回っている。景気を下支えしたいとしても、緩和的な水準で政策金利を据え置くことが、当面の金融政策にできることとなりそうだ。

いつまで据え置きを続けるのか。図表4でNZ中銀の政策金利とCPIの予想を見ると、26年1-3月期のインフレ率は2.8%と鈍化し、27年4-6月期にはインフレ目標の中心値にまで鈍化することが見込まれている。一方、政策金利は利上げ再開の時期として、26年10-12月期が半々ぐらいの見込みで、来年前半には利上げが想定されている。ただし、NZ見通しは今後のデータ次第で変更されうる。あくまで目安ととらえるべきであろう。

なお、短期金融市場に織り込まれた市場の見通しでは、26年12月の理事会で利上げ再開を織り込んでおり、早ければ10月理事会での可能性も見込まれている。筆者の予想も市場の見通しに近く、年内利上げ再開をメインシナリオとしている。足元の豪CPIは前年同期比3.8%上昇とインフレ圧力が残る。豪中銀は年後半にの追加利上げが想定される。NZ中銀も通貨安懸念から、豪中銀の政策を意識した展開が想定される。またNZにもインフレ圧力は残るとみられ、NZ中銀にも年末に向け利上げの声が高る展開を筆者は想定している。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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