Article Title
日本の10-12月期GDP統計の金融政策への影響
梅澤 利文
2026/02/18

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

2025年10-12月期の日本のGDP成長率は前期比0.1%増とプラス成長に転じたが、市場予想を下回った。民間住宅は回復し、個人消費と設備投資は小幅ながら回復した。一方、在庫投資や公共投資の減少が成長を抑制した。日銀の追加利上げのタイミングには、物価や実質賃金、財政政策の動向が影響を与えると見られ、追加利上げの時期は筆者の当初の想定より若干後ずれの可能性もある。




Article Body Text

日本の25年10-12月期GDP成長率はプラス転換するも市場予想を下回る

内閣府が2月16日に発表した2025年10〜12月期の日本のGDP(国内総生産)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.1%増と、前期の0.7%減は上回ったが、市場予想の0.4%増は下回った(図表1参照)。前期比年率換算では0.2%増と、市場予想の1.6%増を下回ったが、前期の2.6%減からは大幅に回復した。

民間住宅投資、個人消費などが下支えし前期比ベースの成長率は0.1%増と、7期連続のプラスとなった。民間企業設備投資も0.2%増だった。一方、輸出は0.3%減で、輸出から輸入(0.3%減)を差し引いた外需寄与度はプラス0.0%だった。前期はマイナス0.3%だった。変動の大きい在庫や公共投資は成長率の押し下げ要因だった。

10-12月期の日本のGDPの主な下押し要因は、おそらく一時的だろう

日本の25年10-12月期GDP成長率はプラス成長には転じたが、市場予想を下回った点では伸び悩みとなった。しかし、内容を見ると在庫投資と公共投資が主な押し下げ要因だった。そのため、今回のGDPの結果が日銀の利上げ姿勢を根本的に変化させるとは見ていないが、若干タイミングに遅れはあるかもしれない。もっとも、利上げタイミングの遅れには他の要因も考慮する必要があるとみている。

10-12月期のGDP成長率は前期比年率で0.2%増、前期は-2.6%減だった。成長率の内訳を寄与度で確認すると(図表2参照)、前期は民間住宅投資や純輸出、民間在庫投資が主な押し下げ要因だった。10-12月期では民間住宅投資はプラス寄与に転じ、純輸出も小幅ながらプラス寄与だった。もっとも、輸出-輸入で産出される純輸出は輸入がマイナスだったことが純輸出を押し上げた面がある。輸出はトランプ関税の影響が残り、輸入と同程度のマイナスであったことから、回復感には乏しい面がある。

民間住宅投資は25年4月の建築基準法等の改正前の駆け込み需要の反動で7-9月期に大幅な減少となったが、10-12月期は回復した。

次に10-12月期の成長率を押し下げた項目を確認すると、主に民間在庫投資と公共部門が挙げられる。そのうち、民間在庫投資は変動が大きい項目で今後を見守りたい。

公共部門は政府最終消費支出、公的固定資本形成、公的在庫変動を合計して算出した。気になるのは公共投資に相当する公的固定資本形成が前期比で1.3%減と、大幅なマイナスとなった7-9月期に続いて軟調な動きが継続していることだ。「責任ある積極財政」を掲げる高市内閣の次の一手がどこまで積極的かが気になるところだ。

10-12月期GDPの押し下げ要因となった在庫投資(公的も含め)は変動が大きいことから、金融政策への影響としては割り引いて考える必要があるだろう。

10-12月期GDPは市場予想を下回ったが日銀は利上げ姿勢を維持しよう

個人消費にあたる民間最終消費支出と、民間企業設備投資がプラスを確保したのは成長率の質を見るうえで一応、安心材料だろう。ただし、民間最終消費支出は7四半期連続でプラス圏の推移ながら、10-12月期は前期比で0.1%増に過ぎない。民間最終消費支出の内訳をみると実質賃金マイナスの状態が長期化する中、食料品などを含む非耐久財や半耐久財が軟調で、買い控えの様子がうかがえる。今後はインフレ率鈍化に伴い、実質賃金がプラスとなる可能性も期待されるが、これが消費に与える影響にも注目したい。

民間企業設備投資は前期比0.2%増と、市場予想の0.6%増を下回るものの、前期の0.3%減からプラス圏には回復した。とはいえ、市場予想を下回った分、物足りなさは残った。

日本企業の設備投資意欲は、人材不足に対応する省力化投資などを受け根強い需要があると思われる。日銀短観の25年12月調査によると設備投資額(含むソフトウェア・研究開発、除く土地投資)は25年度が前年度比9.5%増だった(図表3参照)。省力化投資が含まれるソフトウェア投資額(全規模・全産業)については12.2%増だった。設備投資はこのような中長期的な需要に支えられた回復基調が想定されるが、10-12月期は市場の期待には届かなかったと評価できよう。

10-12月期のGDP統計が日銀の金融政策に影響を与えるだろうか。個人消費の回復ペースが緩やかな背景に物価高があることなどを踏まえると利上げ姿勢を維持に変更はないと思われる。一時より和らいだ感のある円安圧力は、日銀が金融引き締め姿勢を緩めれば再開する可能性もある。また、GDPは在庫の変動分などを除けば市場予想に近い成長を確保できたとみられる。

一方、高市政権の財政政策などには今後も注意が必要だ。その試金石となる消費税の食品の引き下げについて国民会議が6月に中間報告をまとめる予定と片山財務相が示唆した。筆者は次の追加利上げの時期は4-6月期と見込んでいたが、後ずれの可能性も考慮している。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


1月米CPI、物価鈍化は確認できるが注意も必要

12月の米小売売上高と米消費動向の注意点

盛り上がる1月の米雇用統計に、若干の注意

インド準備銀行の据え置きと米印関税合意の背景

米求人件数低下や人員削減増加は何を語るのか

ブラジル中銀の次回の利下げ示唆とその背景