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1月米CPI、物価鈍化は確認できるが注意も必要
梅澤 利文
2026/02/16

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概要

1月の米CPIは前年同月比2.4%上昇と市場予想を下回り、インフレ鈍化が示された。エネルギーの下落や食品の伸び鈍化が主な要因だった。サービスは輸送サービスや一部の生活関連サービスで高い伸びが見られた。関税の影響を受ける財項目は全体として横ばいながら、中古自動車の下落が影響した。今後もサービスや財の動向に注目が必要で、FRBは当面様子見姿勢を維持すると筆者はみている。




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1月米総合CPIは前年同月比2.4%上昇と物価の鈍化が示された

米労働省が2月13日発表した1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.4%上昇と、市場予想の2.5%上昇、2025年12月の2.7%上昇を下回った(図表1参照)。企業が関税の引き上げ分を販売価格に転嫁する動きは続いており、上昇率はまだやや高い水準だ。物価の短期的動向を示す前月比の上昇率は総合CPIが0.2%上昇と、市場予想、前月(ともに0.3%上昇)を下回った。

エネルギーと食品を除いたコアCPIの伸び率は1月が2.5%上昇と、市場予想通りだった。ただし25年12月の2.6%からは鈍化した。前月比ベースではコアCPIは0.3%上昇と、市場予想の0.3%上昇に一致したが、前月の0.2%上昇を上回った。

1月の米総合CPIを押し下げた主なセクターはエネルギーだった

1月の米CPIは総合CPI、コアCPIはともに傾向を反映する前年同月比が前月を下回り、インフレ鈍化が示された。今回の米CPIは、米国のインフレ率が22年6月をピークに、当初は急速に、その後は緩やかながら鈍化を続けている軌道にあることを再確認させた。しかし、内容を見ると、インフレ圧力が完全に払しょくされたとも言い難いようだ。

この点を検討するため、総合CPIの前月比の伸びを、エネルギー、食品、財、及びサービスの4項目に分けて寄与度を確認すると(図表2参照)、1月のCPIが前月を下回った主な要因はエネルギーのマイナス寄与と、食品の伸び悩みだった。反対にサービスは25年12月に比べ、インフレ率を押し上げる要因だった。なお、家具や家電、衣類など関税の影響を受けやすい品目を含む財項目の1月の影響は小さかったが、注意点もみられた。

1月のエネルギー価格の伸びは前月比で1.5%下落した。ガソリンが3.2%下落したうえ、電力価格も0.1%下落した。ただし、電力価格はAI需要などを背景に前年同月比では6.3%上昇している。また、ガソリン価格は1月半ばからは上昇傾向に転じており、変動には注意が必要だ。

次に食品は先月上昇したコーヒーや牛肉が、1月は下落に転じるなど品目ごとの変動がみられた。なお、値上がりが続いた卵は先月に続き下落した。

米CPIのサービスは1月に前月比0.4%上昇と前月を上回った

エネルギーなど変動も大きい項目が1月CPIの主な押し下げ要因だったが、今後の展開を占ううえではサービスと財に注目したい。

サービス(エネルギーサービスを除く)は1月に前月比で0.4%上昇と、前月の0.3%上昇を上回った(図表3参照)。1月の米総合CPIは前月比0.2%上昇とインフレ鈍化を示唆する数字だが、サービス価格に限ると物価の下がりにくさが示唆された。

サービスに占める構成割合が6割近い品目である住居費は0.2%上昇と落ち着いていた。住居費の大半を占める品目である賃料や帰属家賃(持ち家に賃料を払ったと想定して算出)は、1月がともに前月比0.2%の上昇と、落ち着いた伸びにとどまった。もっとも賃料や帰属家賃は政府機関閉鎖によるデータ収集の影響で数値が低く出る(4月データまでは)可能性が報道などで指摘されており、信頼度が低い点に注意は必要だ。

一方、輸送サービス(民間と公共)は前月比1.4%と急上昇した。内訳を品目別にみると、航空運賃(前月比6.5%上昇)、自動車レンタル(5.0%)など急上昇した一部品目に押し上げられた面もある。なお、サービスの中で、住居費、輸送サービス以外でも娯楽(0.4%)、病院サービス(0.9%)、水道・ごみ収集等(0.7%)など、幅広い品目に比較的高い伸びがみられた。

なお、サービスの一部品目の中には年初の価格改定の影響で押し上げられた可能性もある。このように、1月のサービスの品目には通常より高いとみられる品目と、反対に低いとみられる品目もある。価格動向の判断には、もう少しデータを見る必要があるだろう。

最後に、関税の影響を受ける傾向がある財項目についてみると、1月の伸びは前月比0.04%上昇と、前月同様にほぼ横ばいの数字だった。しかし、1月の財価格の伸びが低かった理由を品目レベルで確認すると、比較的構成割合が大きい中古自動車が前月比で1.8%下落した影響が大きい。ただし中古車市場の卸売価格に足元で底打ちもみられる。

他の品目をみると、衣料品が1月は前月比で0.3%上昇となったほか、家具、家電などの価格指数も比較的高い伸びを示した。これらの財品目は一般に関税の影響が大きいことから、関税の影響が完全に払しょくされたとは言い難いようだ。

財項目全体の前月比の伸び率は、前月からほぼ横ばいだったが、中古自動車など一部の品目に押し下げられた面もある。このように、米CPIの動向を占ううえで確認が必要な点もある。米連邦準備制度理事会(FRB)は当面様子見となりそうだ。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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