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10-12月期の米GDP成長率の内容とAI関連投資
梅澤 利文
2026/02/24

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概要

2025年10-12月期の米国実質GDP成長率は市場予想を下回り、前期比年率1.4%増にとどまった。政府機関閉鎖や純輸出の寄与度縮小、個人消費が前期ほど伸びなかったことが主な要因だ。一方、民間固定資本投資、とりわけAI関連設備投資は成長を下支えする要因だ。特にAI関連投資は2025年を通じて成長の押し上げ要因とみられ、目先についても米国経済を下支えしそうだ。




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米国の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率1.4%増と伸び悩んだ

米商務省の経済分析局(BEA)が2月20日に発表した2025年10-12月期の実質GDP(国内総生産、速報値)は、前期比年率で1.4%増と、市場予想の2.8%増、前期の4.4%増を大幅に下回った(図表1参照)。短期的な経済成長の動向を示唆する前期比ベースでは0.4%増と、7-9月期の1.1%増から鈍化した。

米国のGDP成長率は25年通年でみると2.2%増となった。経済の地力を示す潜在成長率は1.8%程度とされ、これを上回った。ただし、23年通年の成長率である2.9%増や24年の2.8%増は下回った。需要項目別にみると、25年10-12月期は政府部門(消費、公的投資)などが軟調だった。

米国10-12月期GDP成長率は政府部門や純輸出などが主な押し下げ要因

米国の10-12月期の実質GDP成長率は市場予想を下回った。需要項目別の成長率に対する寄与度で内容を確認する(図表2参照)。項目は「個人消費」、設備投資などを含む非住宅投資と住宅投資で構成される「(民間)固定資本投資」、「政府部門」、輸出から輸入を差し引いた「純輸出」、及び「民間在庫」の5項目とした。各項目の寄与度の合計がGDP成長率(前期比年率)となるように、積み上げ棒グラフで示されている。

図表2の右端棒グラフは25年10-12月期のGDP成長率の寄与度で、3つの特色がある。1つ目は、政府部門がマイナス寄与となっていることだ。これは過去最長といわれる43日間の政府機関閉鎖の影響であることは明らかだ。このマイナス分は特殊要因とみなせそうだ。

2つ目は純輸出の寄与度縮小だ。純輸出は25年4-6月期、7-9月期と押し上げ要因だったが、10-12月期は成長率への寄与はほぼなかった。

3つ目は個人消費の伸びが10-12月期は2.4%増と、7-9月期の3.5%増を下回ったことだ。25年の米国経済はトランプ関税に翻弄され、純輸出や、駆け込み輸入の受け皿として在庫投資などが、特に年前半に大幅な変動を示した。10-12月期の個人消費の伸び率は、こうした環境の中では堅調な数字と評価できる面はある。しかし、24年の米国経済の主要な押し上げ要因が個人消費だったことに比べると、やや勢いは鈍化したようだ。

ただし、個人消費の中身を見ると、サービス消費は前期比年率3.4%とほぼ前期並みを確保し、堅調な推移が続いている。一方、モノの消費に該当する財消費は0.1%減と、小幅ながらマイナスに転じた。自動車の売れ行きなどが軟調だった。

その他の項目では、民間の固定資本投資はプラス寄与だった。10-12月期の伸びは前期比年率で2.6%増と前期の0.8%増を上回った。回復の背景は主に2つで、1つは住宅投資のマイナス幅が縮小したことだ。住宅投資は7-9月期が7.1%減と大幅なマイナスだったが、10-12月期は前期比年率で1.5%減だった。住宅ローン金利は30年物が6.2%前後と依然高水準ではあるが、過去に比べ低下しており、それに伴い住宅投資に緩やかながら回復の兆しが見られ始めたようだ。

民間固定資本投資項目で過半のウェイトを占める設備投資(非住宅投資)は前期比年率3.7%増と、前期の3.2%増を上回り底堅く推移した。

AI関連投資は米国経済を力強く支えているようだ

25年の米国経済は政府部門や純輸出などが変動要因だった一方、個人消費と設備投資がしっかり下支えする姿であった。特に設備投資についてはAI関連の積極的な投資が押し上げ要因と報道されている。この点を確認する。

なお、AI関連投資というデータ項目が用意されているわけではない。図表3は最近のセントルイス連銀のペーパーなどで採用されているAI関連投資項目を参照して作成した。具体的には、AI投資関連項目として情報処理機器、R&D、ソフトウェアとデータセンタ建設の4項目で構成されている。

最初の3つのデータ項目はBEAのデータが利用できる。一方、データセンターはセンサス局の集計データを利用する必要がある。なお、データセンターデータは月次集計だが、10月分までしか取得していない点に注意が必要だ。

結論から述べると、25年のAI関連投資は米国の成長の押し上げ要因だったようだ。25年1-3月期のGDP成長率は0.6%減と全体では不確実性などを背景にマイナス成長だったが、同期のAI関連投資の寄与度は1.3%程度とプラスに貢献した。7-9月期の寄与度はやや伸び悩んだが、それでも0.5%程度と底堅かった。右端の10-12月期はデータセンターについて筆者はまだ集計できていないが、他の項目だけでも成長率の押し上げ要因となっている。AI関連項目の定義は様々で、あくまで目安だが、AI関連設備投資は米国経済の成長の押し上げ要因であった。そして状況が変わらなければ、目先も下支え要因となりそうだ。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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