Article Title
G7サミットは衆議院解散への発射台?
市川 眞一
2023/05/19

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

G7広島サミットが始まった。連邦債務の法定上限問題で訪日が危ぶまれた米国のジョー・バイデン大統領も出席、ウクライナ、台湾海峡などの安全保障から生成AIの取り扱いなど、多岐に渡る議論が行われる見込みだ。岸田文雄首相は、議長として外交力を示すことに注力するだろう。最近の内閣支持率上昇の傾向から見ても、6月に衆議院が解散される可能性は十分にある。



Article Body Text

G7サミット:岸田政権にとり内政上も重要なイベント

主要報道7社の世論調査を見ると、岸田内閣の支持率が昨年12月を底に上昇へ転じている(図表1)。3月16、17日の尹錫悦大統領の訪日、同21、22日の岸田首相によるウクライナへの電撃訪問は、有権者の政権に対する評価を押し上げる上で大きく貢献したようだ。また、内政面において、新型コロナの水際対策撤廃による訪日外客の増加、2月検針分からの電力・ガス料金への補助金給付なども、取り敢えずは好意的に受け止められているのだろう。

 

 

 

そうしたなかで開催される今回のG7サミットは、いつになく重要な会合となるだろう。ロシアによるウクライナ侵攻、中国の覇権国化と台湾海峡問題、国際金融不安、そして生成AIのルール作りなど、直面する課題が多岐に渡るからだ。

第1次石油危機を契機に始まったG7サミットは、近年、その役割が不明確になり、重要性が低下していたと言える。特にリーマンショックで米国を中心とした主要先進国経済が危機に陥り、中国、インド、ロシア、サウジアラビアなど新興国の台頭が著しかったことから、国際協議の場はG7からG20サミットへと移行した感が否めなかった。

しかしながら、ウクライナ戦争や台湾海峡問題により、民主主義国家と全体主義国家の二項対立が再び浮上、同志国としてのG7の役割が再び注目されている。そうしたなか、議長を務める岸田首相にとって、外交での成果は内政へも好影響を及ぼしているようだ。G7サミットに野党は参加することができない。岸田首相の地元である広島で開催されるこのサミットは、同首相にとり政権浮揚を図る上でも極めて重要なイベントになるだろう。

 

安倍元首相:自民党総裁選1年前に国民に信を問う

安倍晋三元首相は、2015年9月、2018年9月、現職として2回の自民党総裁選で再選された。その約1年前となる2014年11月21日、2017年9月28日、衆議院を解散、総選挙で勝利したことにより自民党内での指導力を強化したのである(図表2)。岸田首相が来年9月の自民党総裁選に勝つためには、今年末までに国民に信を問うことが必須だろう。

 

 

 

そうした観点から見れば、このG7サミットが成功に終わった場合、岸田首相にとって衆議院解散のタイミングを考える重要なイベントになるのではないか。6月にまとめる『経済財政運営と改革の基本方針』(骨太の方針)には、同首相が最重要課題とする子ども・子育て支援の骨格が盛り込まれる。それは、国民に信を問う上での大義名分になり得るだろう。

もちろん、不確定要因も少なくない。特に米国の連邦債務の法定上限問題が決着せず、デフォルトになった場合、世界経済に及ぼす影響は甚大と想定される。日本も例外ではなく、解散・総選挙により政治的空白を作るのは難しい。

ただし、そうした条件がクリアされた場合、6月21日の今通常国会会期末直前、岸田首相が解散に打って出る可能性は十分にある。今回のG7サミットは、国際情勢のみならず、日本の内政も左右する会合になりそうだ。


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


米国大統領選挙 アップデート②

岸田政権による次の重点政策

東京はアジアの金融ハブになれるか?

米国の長期金利に上昇余地

新たな中東情勢下での原油価格の行方