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2025年衆参同日選の可能性
市川 眞一
2024/11/01

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概要

第50回総選挙の結果、自民、公明両党の連立政権は衆議院で過半数を割った。当面、石破茂首相は続投、国民民主党などに政策毎の協力を求めるだろう。これで、来年7月の参議院選挙の重要性が著しく高まった。野党が政権を獲るには、参院でも与党を過半数割れに追い込む必要がある。一方、自民党は、改めて総裁選を行った上で、衆参同日選の可能性を探るのではないか。



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■ 石破首相は続投へ

総選挙で自民党は191名が当選したが、非公認でった同党系の当選者を加えれば、実質的には197議席と言える。ただし、それでも議席獲得率は42.4%であり、この30年間では政権を失った2009年8月の第45回に次ぐ低水準だ(図表1)。


同党の誤算は、9月27日の総裁選挙で有権者の人気があった石破首相を選んだにも関わらず、石破内閣の支持率が、歴代10内閣の発足時と比べ極めて低くかったことだろう(図表2)。人事などでの冷遇に耐え、党内野党的姿勢を堅持してきたことが、同首相の人気の背景だった。しかし、内閣総理大臣就任後、党内融和を優先、総裁選で反対していた早期解散に踏み切った上、積極的だった夫婦別姓などについての態度を曖昧にしたことから、政治とカネの問題に対する自民党の逆風を撥ね返せなかったと見られる。


ただし、11月11日に召集される特別国会で、野党が結束して首班指名に臨む可能性は低い。結局、比較多数で石破首相が第103代内閣総理大臣へ再任されるだろう。自民、公明連立与党は、国民民主党を中心に野党との政策毎の協議を行い、予算、法案を処理する意向のようだ。


経済政策は妥協が必要となるため、反対論が多い構造改革的な施策は先送りされるだろう。むしろ、ばらまき的な財政拡大路線となる可能性が強い。一方、岸田文雄前首相が提唱した資産運用立国については、反対意見が少なく、iDeCoの見直しなどが粛々と実施されるのではないか。

■ 燻る衆参同日選論

与野党にとり、次の大きな山場は2025年7月の参議院選挙と言える。立憲民主党は、参議院でも自公連立与党を過半数割れに追い込み、次の総選挙で政権を狙う構想だろう。

自民党は参議院で114議席であり、27議席を持つ公明党との連立で過半数の125議席を確保してきた(図表3)。ただし、次の参院選で与党が17議席を失えば、衆参両院において過半数割れとなり、政権維持は実質的に困難になると見られる。

そうしたなか、与党内では、何等かの転換点がない場合、参院挙を石破首相の下で戦うのは難しいとのムードになる可能性が強い。過去には、2001年4月、3ヶ月後の参院選を控えて内閣支持率が10%を切り、森喜朗首相(当時)が退任に追い込まれたことがある。この時は、臨時に行った総裁選において、「自民党をぶっ壊す」と公言していた小泉純一郎氏を総裁に選出、参院選を同首相の下で圧勝して危機を乗り切った。

現時点で自民党内において「石破降ろし」が表面化しない理由は、党の分裂により政権を失うリスクを回避する意図があるだろう。さらに、石破首相の退陣は今ではなく、参院選を数ヶ月後に控えた時期が最善との判断も要因ではないか。具体的には、2025年度予算成立後の来年4月上旬が、最も可能性の高いタイミングと想定される。

改めて総裁選を実施、新たな総裁・内閣総理大臣の下で与党への逆風が和らげば、通常国会会期末に衆議院を解散して衆参同日選挙を行うことも選択肢と言えそうだ。ダブル選挙は、1980年と1985年に過去2回の例がある。この2回は組織力の強さで自民党が圧勝した(図表4)。

いずれにせよ、当面、政局は不安定化せざるを得ない。自公両党の現政権がこれを安定化するには、連立の枠組みを拡大するか、もう一度総選挙を行うか、この二つ以外に方法はないだろう


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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