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- ポスト石破とマーケット
石破茂首相が退任を表明、自民党は10月4日の党大会で総裁選挙を行う。昨年9月、石破首相と総裁の座を競った高市早苗元総務相、小泉進次郎農水相、林芳正官房長官など5名程度の立候補が見込まれる。誰が次期総裁、首相であろうと、次期通常国会へ向けた連立の枠組み拡大が急務だ。一方、積極財政策ならば、国債市況の不安定化を通じて円安要因になるのではないか。
■ 石破政権への対照的な姿勢
9月7日の記者会見で石破首相が退任の意向を示し、自民党は実質的に総裁選へ突入した。昨年9月の総裁選における立候補者を軸に、最終的には5名程度で争われる見込みだ(図表1)。
石破首相の退任表明前に大手報道機関が行った世論調査によれば、「次の首相にふさわしい政治家」との趣旨での設問に関し、一般有権者の支持率においては高市元総務相が先行、小泉農水相が続いている(図表2)。次期自民党総裁レースは、この2人を軸に展開する可能性が強い。
1年前と比べ、劇的に変化したのは、自民党所属国会議員の数だ。昨年10月の総選挙、今年7月の参議院選挙を経て、368名から295名へ73名減少した。総裁選への立候補には20名の推薦が必要であり、ハードルは上がったと言えよう。
麻生派及び旧派閥別だと、旧安倍派に所属していた議員が大幅に減少した(図表3)。同派系議員は、高市、小林両氏を支持する傾向が強く、前回総裁選での推薦人のうち、引退、落選などで高市氏は9名、小林鷹之元経済安保担当相は7名が今は現職議員ではない。これは、両氏にとってハンディと言えよう。
他方、小泉農水相は4名減、林官房長官は3名減に止まった。また、党員投票が実施されることから、昨年9月の総裁選で29.3%を獲得した石破首相票の行方も焦点の1つと言える(図表4)。
総裁選後、高市、小林両氏は内閣、党の要職を固辞、石破首相への批判的な言動を隠さなかった。一方、小泉農水相、林官房長官は、石破批判を控え、閣僚として石破政権を支えている。
高市氏は、昨年の総裁選において、第1回目の投票では石破首相を抑えて首位だった。今回も有力候補であることに疑問の余地はない。ただし、石破内閣の支持率が末期になってむしろ上昇するなか、この1年間の政治姿勢が、総裁選、特に党員投票に影響する可能性があるのではないか。
■ 重要な連立協議
誰が自民党総裁であろうと、自民、公明両与党が衆参両院で過半数を割っていることは変わらない。もっとも、政権を決める衆議院において、両党は実質的に221議席を有している(図表5)。
仮に立憲民主党、日本維新の会、国民民主党が連携しても、9月11日時点では213議席であり、与党側が分裂しない限り、3党が首班指名選挙で勝つにはさらに9議席が必要だ。つまり、れいわ新選組、共産党、参政党などを連立に含めなければならず、それは現実的ではないだろう。
従って、政権交代の可能性は小さく、次期自民党総裁は、内閣総理大臣に選出されると見られる。
ただし、両院において少数の状態で、来年1月に召集される通常国会において、2026年度予算を年度内に成立させるのは極めて難しい。従って、政権発足後、速やかに連立の枠組み拡大を模索するのではないか。最有力候補は維新の会だろう。
日本経済・市場にとり重要なのは、誰かよりも、何をするかである。市場の一部には、積極財政、金融緩和継続と言ったリフレ的政策への期待があるようだ。もっとも、物価対策下におけるリフレ策には大きな矛盾があり、国債市況の不安定化、円安を通じてむしろインフレを加速させる可能性がある。
7月の参院選で野党は軒並み消費税減税を主張した。次期首相が総裁選で何を訴え、どのような姿勢で連立協議に臨むのか、注目すべきだろう。
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