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- 「弱い連立」に基づく高市政権
自民党と日本維新の会の連立により高市早苗内閣が発足した。もっとも、維新の会は閣僚を出さず、選挙協力も今のところ明確ではない。つまり、「弱い連立」だ。維新の会が連立を離脱した場合、衆議院で内閣不信任案が成立する可能性がある。従って、自民党は維新の会を蔑ろにはできないだろう。政策面から見ても、高市色より維新の会が主導権を握る場面が増えるのではないか。
■「弱い連立」故の強い発言力
連立政権の大前提は政策合意である。その上で連立の強度を決めるのは、枠組み、そして選挙協力の有無の2つだろう(図表1)。枠組みについては、閣内協力、閣外協力、政策毎に是非を判断する部分連合の3つが存在する。
自民党と公明党による連立政権は、公明党が閣僚を出し、且つ国政選挙において協力を行う「極めて強い」結び付きだった。それ故、公明党の連立離脱は意外だったと言えよう。もっとも、自民、公明両与党が衆参両院で過半数割れになり、むしろ野党の政策が実現し易い状況について、公明党には強い不満があったと推測される。
一方、今回の連立に当たり、維新の会は閣僚を出さず、自民党との選挙協力も今のところ不透明だ。これは、現時点において、「弱い連立」であると認識される。言い換えれば、維新の会は、政策に対する高市政権、自民党の姿勢により、容易に連立を抜けることが可能な位置取りだ。
仮に維新の会が政権を離脱、立憲民主党、公明党と協調した場合、衆議院において自民党の議席数を凌駕し、内閣不信任案が成立しかねない(図表2)。また、事態を打開するため高市首相が衆議院を解散する手はあるものの、公明党との選挙協力がないなかで、自民党が苦戦を強いられるシナリオは十分に起こり得る(図表3)。
そうした可能性は、自民党にとって大きな脅威と言えよう。従って、政権内において、維新の会の発言力は非常に強い状態にあると考えられる。
■高市カラーは抑制か!?
高市政権の当面の経済政策については、維新の会と取り交わした『連立政権合意書』が基本的な指針となる見込みだ。「経済財政関連施策」には、大枠として6項目が記されていた(図表4)。このうち、特に重視されるのは、立法化の時期を今臨時国会中と明記したガソリン税暫定税率の廃止、物価対策を盛り込んだ2025年度補正予算だろう。また、「インフレ対応型の経済政策に移行するために必要な総合対策を早急にとりまとめる」とあり、具体的には所得税基礎控除の引き上げに関して、制度設計を「年内」に行うとされた。
一方、維新の会が7月の参議院選挙で公約した2年間に限定した飲食料品の消費税非課税化については、合意書に盛り込まれたものの、時期が明示されていない。年間5兆円程度の財源が必要で、赤字国債の増発が避けられず、国債市況や為替市場に影響が及ぶリスクを懸念、優先順位が下がったのではないか。
高市首相は、「責任ある積極財政」を掲げ、歳出拡大、緩和的な金融政策の継続を訴えてきた。しかしながら、維新の会との連立により、政策面で高市カラーに一定の歯止めが掛かると推測される。維新の会の前進である大阪維新の会は、大阪府の行財政改革を訴え、「身を切る改革」を党是としてきた。国政においても、財源の裏付けに配慮するのではないか。
自民党との連立に当たり、維新の会は1)国会議員定数削減、2)大阪副首都構想、3)社会保障改革による現役世代の保険料負担の軽減・・・3つを重点課題とした。当面の物価対策にメドを付けた上で、これら3つの実現を目指すだろう。
積極財政、金融緩和はこれまでも繰り返されてきた。維新の会の政権参加により、社会保障制度などの改革が具体的に進むか、注目される。
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