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英国議会EU離脱合意案採決前に押さえたいポイント
梅澤 利文
2019/01/15

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概要

昨年12月に延期されたことで、1月15日に実施予定のメイ政権とEUの離脱合意案に対する議会の採決は成立が危ぶまれています。仮に否決となれば、無秩序な離脱へ近づく印象ですが、市場は落ち着いています。この背景と今後の展開に対する考え方を述べます。



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英国EU離脱合意案採決:採決は否決される見込みで、今後の展開は不透明

英国議会(下院)は2019年1月15日に、欧州連合(EU)との離脱合意案の是非を採決する予定です。市場予想では、与野党双方に合意案への反発が強く、否決される公算が高まっています(図表1参照)。

メイ首相は昨年12月の当初の採決予定を延期して説得を重ねましたが、離脱を支持する強硬派や、閣外協力政党の民主統一党(DUP、10議席)は反対の姿勢を維持しています。無秩序な(合意なき)離脱の懸念がある中、通貨ポンドには底堅い動きが見られます(図表2参照)。

 

 

どこに注目すべきか:離脱合意案、採決、国境問題、再国民投票

昨年12月に延期されたことで、1月15日に実施予定のメイ政権とEUの離脱合意案に対する議会の採決は成立が危ぶまれています。仮に否決となれば、無秩序な離脱へ近づく印象ですが、市場は落ち着いています。この背景と今後の展開に対する考え方を述べます。

市場が比較的冷静な最大の背景は、与野党で対立している英国議会も、交渉の相手であるEUも無秩序な離脱を回避する意向では一致していると見られるからです。例えば、秩序無き離脱を回避することが期待される税制変更の制限が1月8日に議会で可決されたことは、議員も無秩序な離脱には反対していると市場では解釈されています。

また、仮に否決となっても、無秩序な離脱の回避策も見られます。例えば、15日の採決が否決されても離脱案の修正案を提出して2回目の採決に向かう可能性が残されています。そもそも昨年EUとメイ政権が合意した離脱案の問題点は離脱後のアイルランドの国境を巡り、国境管理問題が解決するまで英国がEU規則に従い続ける余地を残す条項があることです。EUはこの点に譲歩を示していませんでしたが、採決の結果によっては、1年に限りEU規則に従うという譲歩案などを検討、提案する可能性も考えられます。

否決された場合の別の選択肢として、EU離脱交渉期間の延長も浮上しています。既に英国の野党労働党は延長の可能性を示唆しています。延長はEUの同意も必要ですが、スペインなどは欧州議会選挙までの延期はありえないと述べ、逆に言えばそこまでの延期仕方なしを示唆しています。

なお、EUは期間延長の見返りに、新たな合意案を模索すると見られます。結局、仮に15日に否決されても、直後の修正案か、離脱期限延長と引き換えに新たに条件を厳しくした合意案で秩序ある離脱となる可能性が見込まれます。

離脱期限延長の選択肢として、再国民投票の可能性も浮上しています。野党労働党は総選挙を望んでいるようですが、再国民投票への支持も見せています。2年前の国民投票と違い、世論調査では残留が離脱を上回るだけに、EUも期間延長を認める可能性があり、再国民投票への期待は幾分高まっています。ただ、特例法の成立や、実施要綱を巡り半年程度準備期間が必要と見られ、この間に世論の風向きが変わるリスクなどが懸念されます。

最終決着は、離脱か残留かに絞られるもそこに至る道筋は全く不透明です。まずは、15日の採決を注視しています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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