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IMF、世界経済見通しを数字以上に懸念する理由は?
梅澤 利文
2019/01/22

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概要

今回の国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しのコメントは、成長率の下方修正以上に懸念をにじませています。世界経済の先行き不安の背景である米中貿易戦争の今後の展開が不透明であることに加え、金融引締めの影響などについてもIMFは懸念を示しています。



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IMF世界経済見通し:2019年の世界経済成長率見通しを、2回連続で下方修正

国際通貨基金(IMF)は2019年1月21日に最新の世界経済見通し(WEO)を発表し、19年の世界経済の成長率を3.5%と、18年10月時点の予想に比べ0.2ポイント下方修正しました(図表1参照)。ただ、貿易問題を巡る緊張が高まれば世界経済はいっそう減速するとも警告しています。

なお、20年の世界経済は3.6%に改善すると予想していますが、3カ月前の予想に比べて0.1ポイント低い水準です。

 

 

どこに注目すべきか:WEO、貿易戦争、政策金利、消費税

今回のIMFの世界経済見通しのコメントは、成長率の下方修正以上に懸念をにじませています。世界経済の先行き不安の背景である米中貿易戦争の今後の展開が不透明であることに加え、金融引締めの影響などについてもIMFは懸念を示しています。

国・地域別に成長予想の特徴を振り返ります。

まず、米中貿易戦争の当事国である米国と中国の成長見通しは前回から据え置かれています。成長率予想算出の仮定を見ると、既に表明された関税引き上げなどは前回WEOで織り込み済みだからと見られます。ただ、米国の20年の成長率は減税などの効果の低下と、金利上昇の影響で1.8%に減速するとIMFは見ています(図表2参照)。

19年の成長率見通しを引き下げたのは主に欧州と、新興国です。欧州では特にドイツの成長率は1.3%と、前回予想から0.6ポイント引き下げられました。自動車の排ガス基準の厳格化を受けた低調な工業生産が主な理由です。イタリアも財政問題による国債利回りの上昇で成長が抑制され、抗議デモ「黄色いベスト運動」の影響でフランスの成長率予想も下方修正されています。

新興国では中国、インド、ブラジルなど主要国の19年予想は据え置きまたは小幅な上方修正となっています。しかしながら、メキシコやトルコなど通貨防衛のため利上げを実施してきた国々の経済成長率が大幅に減速するとIMFは指摘しています。また、昨年後半、予想以上に政策金利を引き上げたロシアについては下落傾向であった原油価格動向などを反映して小幅ながら成長率見通しを引き下げています。

なお、日本の成長率については、10月の消費増税を見据えて、日本政府が準備する経済対策を踏まえ、19年の成長率を1.1%と、前回から0.2ポイント上方修正しました。20年も、駆け込み消費の反動減で0.5%と19年に比べ低水準ですが、消費税対策を踏まえ0.2ポイント上方修正しました。

今回のWEOについて、IMFのラガルド専務理事は21日に記者会見で世界不況がすぐそこに来ているというわけではないと述べています。この点を踏まえれば、昨年末の株式市場下落の時に意識された景気後退はやや過剰であった可能性もあります。ただ、ラガルド専務理事は仮に大きな景気後退が起きた場合に、金融政策や財政政策などの対応余地が乏しいとして懸念をにじませています。


梅澤 利文
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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