Article Title
何がトランプ大統領を制裁関税に向かわせたのか?
梅澤 利文
2019/08/02

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

トランプ大統領が制裁関税発動の意向を表明したことで、6月の大阪での20ヵ国・地域(G20)首脳会議の際の会談で合意した「休戦」の安堵感は失われました。今回の制裁関税対象の詳細は未公表です。ただ5月の草案通りなら、生活用品も含まれており、経済への影響が懸念されます。それでも制裁関税に向かった要因を述べます。



Article Body Text

米中貿易戦争:トランプ大統領が中国製品3000億ドル相当に関税発動の意向を表明

米国トランプ大統領は2019年8月1日、現時点で制裁関税の対象となっていない中国からの輸入品3000億ドル(約32兆2300億円)相当に10%の関税を課すとツイッターで発表しました(図表1参照)。中国との貿易戦争のエスカレートが懸念されます。

トランプ大統領はこの新たな関税は9月1日から賦課されると説明しています。米中は貿易戦争の「休戦」で合意していましたが、休戦合意は反故になると見られます。なお中国製品2500億ドル相当への25%関税は継続する模様です。

 

 

どこに注目すべきか:制裁関税、米中首脳会議、北戴河会議

トランプ大統領が制裁関税発動の意向を表明したことで、6月の大阪での20ヵ国・地域(G20)首脳会議の際の会談で合意した「休戦」の安堵感は失われました。今回の制裁関税対象の詳細は未公表です。ただ5月の草案通りなら、生活用品も含まれており、経済への影響が懸念されます。それでも制裁関税に向かった主な要因は次の通りです。

まず、情報の整理をすると、新たな関税は9月1日から10%を賦課、その後の交渉で税率は25%を上回る可能性もあれば、引き下げられる可能性もあると述べています。8月末までの中国側の回答を強く求める交渉姿勢が伺えます。

次に、トランプ大統領は何が不満なのか?ツイッターには中国が農産物(大豆)を期待通り購入しないことと、フェンタニル(合成オピオイド:鎮痛剤目的ながら麻薬ともなっている)の米国への輸出停止が進んでいないことを挙げています。

米国産大豆は年間3000万トン前後中国に輸出されていました(図表2参照)。しかし18年の中国の報復関税後、中国の購入量は急減、19年7月末までの購入ペースも低水準にとどまっています。中国がブラジルなどに購入先を変更したためと見られます。なお、米国の大豆を生産する主な州にはアイオワやオハイオなど選挙に重要な州が含まれます。

フェンタニルの常用は米国の深刻な社会問題です。

反対に、中国の事情に目を向けると、10月には建国70周年を迎える中国が、米国に容易く妥協する姿勢はとりにくいのかもしれません。公式でないため詳細は不明ですが北戴河会議で長老が習近平主席に圧力をかけているのかもしれません。なお、ツイッターでトランプ大統領は習近平主席を友人と呼ぶなど、米中の交渉が停止したわけではないとも思われます。問題は今回の制裁関税は選挙を意識したものであるなら中国は妥協を遅らせる可能性があることと、中国からの輸入品への制裁関税が米企業もしくは国民への増税となり、景気への悪影響が懸念されることです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


2月の東京CPIの内容確認と日銀金融政策の展望

10-12月期の米GDP成長率の内容とAI関連投資

ニュージーランドとオーストラリアの金融政策の比較

日本の10-12月期GDP統計の金融政策への影響

1月米CPI、物価鈍化は確認できるが注意も必要

12月の米小売売上高と米消費動向の注意点