Article Title
ジャクソンホール会議を前にした金融政策のポイント
梅澤 利文
2019/08/21

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

毎年夏の恒例となっているジャクソンホール会議では、当局者から金融政策について思わぬ発言があったこともあり、注目度の高いイベントです。市場には9月FOMCで0.5%ポイントの利下げなど、大幅緩和を示唆する発言を期待する声もあります。ピクテでも市場のセンチメント悪化を受け利下げを想定しますが、9月とその後年内1回の合計2回で0.5%ポイントを見込んでいます。



Article Body Text

ジャクソンホール:パウエル議長の講演に市場の注目が集まる

米ワイオミング州ジャクソンホールで2019年8月22~24日にカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会議)が開催され、主要中央銀行の当局者が集う予定です。中でも、23日に予定されているパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演が注目されています。

7月30~31日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で決定された利下げについて、パウエル議長は保険的利下げと会見で説明しています。しかし、8月月初にトランプ大統領が制裁関税の意向を表明したことで、市場のセンチメントは急速に悪化しました(図表1参照)。

 

 

どこに注目すべきか:ジャクソンホール会議、貿易戦争、支持率

毎年夏の恒例となっているジャクソンホール会議では、当局者から金融政策について思わぬ発言があったこともあり、注目度の高いイベントです。市場には9月FOMCで0.5%ポイントの利下げなど、大幅緩和を示唆する発言を期待する声もあります。ピクテでも市場のセンチメント悪化を受け利下げを想定しますが、9月とその後年内1回の合計2回で0.5%ポイントを見込んでいます。

リーマンショック後で米10年国債利回りが1.5%台に低下したのは、欧州債務危機が悪化した12年、新興国通貨安などが懸念された16年となります。8月月初、やや唐突にトランプ大統領が意向を表明した中国からの輸入品に対する制裁関税に対する市場センチメントの悪化に米中貿易戦争の影響の大きさが改めて示されました。

米中貿易戦争に加え、逆イールド(長短金利差の逆転)が米国の景気後退を想起させたことも、センチメントを悪化させたと見られます。このような不確実性への対処として、最も多く予想されている、0.25%の利下げを9月のFOMCで実施する公算は高いと思われます。

一方、堅調な個人消費や雇用市場を見ると、米国経済は当面、底堅い動きが想定されます。過度な利下げの必要性は低いように思われます。なお、サンフランシスコ連銀総裁が20日に米国経済がリセッション(景気後退)に向かっていないとする見方を述べています。

なお、ジャクソンホール会議は今週末に開催予定ですが、米中貿易戦争を占う上で重要な、米中会議が9月上旬に予定されています。実施の有無も含め会議を前に(9月FOMCは17~18日開催)パウエル議長が積極的な政策を示す可能性は低いと思われます。

最後に、サンプルが少なく、今後の詳細な検討が必要ですが、8月以降の世論調査を見る限り、トランプ大統領支持は頭打ちで、不支持率が増加しています(図表2参照)。またNBC・米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の調査で自由貿易が米国のためになるという回答は64%と、同調査項目として過去最高と伝えられています。逆に自由貿易反対という意見は3割を下回りました。何をするのか予想し難いトランプ政権ですが、世論の支持を気にかけることがあるのか、今後の対応に注目しています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


円安に見る、日銀ゼロ金利政策解除は単に出発点

中銀ウィーク、FRB以外に見られた注目点とは

3月のFOMC、年内3回利下げ見通しを何とか維持

ECB、政策金利の運営枠組み見直しを発表

2月の米CPI、インフレ再加速の証拠は乏しいが

2月の米雇用統計は波乱材料とならず