Article Title
中国PMI、一部に改善は見られるも前途多難
梅澤 利文
2019/09/02

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

概要

中国国家統計局が公表した8月の製造業PMIは49.5となり、4ヵ月連続で景気判断の目安となる50を下回りました。財新の製造業PMIは8月、堅調な生産活動を反映して市場予想を上回りましたが、持続性に懸念も残ります。一方、内需を示すサービス業PMIは比較的底堅い動きとなりました。中国経済は当局の景気刺激策頼りの展開が想定されます。



Article Body Text

中国製造業PMI:政府系の製造業PMIは市場予想を下回る

中国国家統計局が2019年8月31日に発表した8月の製造業購買担当者景気指数 ( PMI )は 49.5と、市場予想(49.6) 7月(49.7)を下回りました。一方、非製造業PMIは53.8と、7月の53.7から上昇しました。なお、PMIは50が拡大・縮小の目安となります(図表1参照)。
財新伝媒が9月2日に公表した8月の中国製造業PMIは50.4と、市場予想(49.8)、前月(49.9)を上回りました。

 

 

どこに注目すべきか:製造業PMI、的を絞った政策、新規受注

中国国家統計局が公表した8月の(政府系)製造業PMIは49.5となり、4ヵ月連続で景気判断の目安となる50を下回りました。財新の製造業PMIは8月、堅調な生産活動を反映して市場予想を上回りましたが、持続性に懸念が残ります。一方、内需を示すサービス業PMIは比較的底堅い動きとなりました。中国経済は当面の間、政府の景気刺激策頼りの展開が想定されます。

今回の政府系と財新のPMIに、中国経済の厳しい現状が映し出されています。ただわずかながら改善点も見え隠れします。

まず改善点のひとつとして、中小企業の動向を反映するといわれる財新製造業PMIが改善しました。また、政府系についても、企業規模別指数を見ると、大企業、中堅企業は8月低下した一方で、中小企業指数は改善しました。可能性として、当局が進めてきた、中小企業に的を絞った景気刺激策(預金準備率引き下げや 中期貸出制度)が効果を発揮したのかもしれません。

消費などを反映しやすいサービス業PMIが50を超えています。財新のサービス業PMIは4日に発表予定ですが市場予想は50を上回っています。内需に底堅さも見られます。なお、解釈にはまだ慎重ですが、27日に米国の会員制量販大手が上海に1号店をオープン、中国人客が殺到したと報道されました。米中の政治的緊張などどこ吹く風ですが、量販大手の打ち出した大幅値下げに飛びついただけなのか、それとも、意外と中国の消費は根強いのか見極めが必要です。仮に中国の小売売上高の回復が鈍い背景が自動車ならば、当局の対応は自動車がメインとなるのかもしれません。

それでも、PMI全体を見るとやはり懸念が先立ちます。例えば、製造業PMIの構成指数を見ると、拡大・縮小の目安を超えたのは生産などに限られ、先行きを示す新規受注系の指数は50を下回っています。特に米中貿易戦争の先行きが不透明な中、輸出向け新規受注は低迷したままです(図表2参照)。米中貿易戦争は長期化の可能性もあり、当面は当局の景気刺激策が求められる展開を想定しています。

ただ、中国の景気刺激策も無限に打ち出せるわけではなく、以前に比べ政策の自由度が低下している点に注意は必要です。例えば、中国の不動産市場には過熱感も見られ、幅広い金融緩和を控え、的を絞った金融政策を主体としているように思われます。財政政策にも制約がある中での景気刺激策では、底割れ回避の可能性はあったとしても、爆発的な回復は見込みがたいように思われます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


4月のユーロ圏PMIの改善とECBの金融政策

米国経済成長の背景に移民流入、その相互関係

IMF世界経済見通し:短期的底堅さを喜べない訳

ベージュブックと最近のタカ派発言

中国1-3月期GDP、市場予想は上回ったが

ECB、6月の利下げ開始の可能性を示唆