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中国19年GDP成長率、目標におさまるも先行きに不安もある
梅澤 利文
2020/01/17

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概要

中国の19年GDP成長率は目標を達成したとはいえ、四半期ごとの推移を見ると下落傾向で、やはり米中貿易戦争の影響は重荷であったと見られます。逆の見方をすれば、当局の景気下支え策で何とか持ちこたえたのが昨年の中国景気であったと思われます。ただ、今年の中国経済を占うと、同じ規模の刺激策は見込みにくいかもしれません。



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中国19年GDP成長率:19年は通年で6.1%の成長、29年ぶりの水準

中国家統計局が、2020年1月17日に公表した19年の10-12月期GDP(国内総生産)成長率は前年同期比6.0%増と、市場予想、前期(共に6.0%増)と一致しました(図表1参照)。この結果、中国の19年通年のGDPの成長率は6.1%となり、当局の成長目標(6.0~6.5%)にはおさまりましたが、29年ぶりの低水準となっています。

なお、同日に公表された19年12月の小売売上高は前年同月比8%増(市場予想は7.9%増)、鉱工業生産は前年同月比6.9%(市場予想は5.9%増)と予想を上回りました(図表2参照)。また、19年通年の固定資産投資は前年比5.4%増と、市場予想の5.2%増を上回りました。

 

 

どこに注目すべきか:中国GDP成長率、鉱工業生産、減税

中国の19年GDP成長率は目標を達成したとはいえ、四半期ごとの推移を見ると下落傾向で、やはり米中貿易戦争の影響は重荷であったと見られます。逆の見方をすれば、当局の景気下支え策で何とか持ちこたえたのが昨年の中国景気であったと思われます。ただ、今年の中国経済を占うと、同じ規模の刺激策は見込みにくいかもしれません。

まず、GDPと同日に公表された昨年12月の経済データで足元の中国の経済状況を確認すると、前年比6.9%と市場予想を上回った鉱工業生産や、前年比8%と比較的高い水準を維持した小売売上高などに改善が見られました。

また、(図表にはありませんが)固定資産投資も市場予想は上回っています。当局が昨年実施した財政政策や金融政策の効果などが下支え要因として想定されます。さらに、今年になり、中国当局は6日にほぼすべての金融機関を対象に預金準備率を引き下げています。また今後も中期貸出ファシリティなどにより一定の資金供給を継続する見込みで、当面の経済の安定は想定されます。

しかし、次の点が懸念材料です。

今回数字の上では回復したように見える鉱工業生産ですが、内容を見ると鉄鋼製品(前年比11.3%)などがけん引する一方、環境規制対応に苦しむ乗用車はマイナスで、携帯端末も3.5%増にとどまっています。

固定資産投資は、当局が拡大を懸念する不動産が前年比10%近い伸びを確保する一方で、当局が回復を期待しているインフラ投資と製造業は低水準に留まっています。

昨年中国のGDP成長率を下支えした要因に約2兆元の刺激策(減税と社会保険料引き下げ合計)があげられます。リーマンショック後の4兆元には及ばないものの、19年の名目GDP規模が概ね100兆元の中国では力強い景気下支え要因と見られ、米中貿易戦争のマイナスの影響はある程度相殺されたものと思われます。しかし、20年について同規模の減税などが実施される可能性は低いと見られます。

幸い米中貿易交渉は第1段階に正式合意しましたが、トランプ政権が交渉相手ゆえ、先行きについて安心は早いと思われます。債務削減の必要があるため金融緩和も大胆には出来ず、財政政策も抑制ということであれば、20年の成長目標を昨年より若干引き下げる可能性もあると見られます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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