Article Title
補完的レバレッジ比率の緩和措置終了の顛末
梅澤 利文
2021/03/24

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

補完的レバレッジ比率(SLR)という耳慣れない言葉が米国債市場の下落(利回りは上昇)要因として最近クローズアップされてきました。米国大手銀行にSLRの算出で分母に求められていた保有米国債と準備預金を計算から除外することを認めていた条件緩和措置を終了することにしました。これにより懸念される米国債市場への影響は、ある程度抑制されつつあるようです。



Article Body Text

補完的レバレッジ比率:利回り上昇が懸念される中、予定通り条件緩和措置を終了

米連邦準備制度理事会(FRB)は2021年3月19日に声明で米大手銀行に対する資本面の優遇策である「補完的レバレッジ比率(SLR)」の条件緩和措置を、3月31日で終了することを表明しました。

市場では金融システムと利回りが上昇傾向となっている米国債市場(図表1参照)に与える影響軽減のため期限の延長を期待していましたが、FRBは、予定通り(そもそも1年の予定)終了することを発表しました。

どこに注目すべきか:補完的レバレッジ比率、資本比率、緩和措置

補完的レバレッジ比率(SLR)という耳慣れない言葉が米国債市場の下落(利回りは上昇)要因として最近クローズアップされてきました。米国大手銀行にSLRの算出で分母に求められていた保有米国債と準備預金を計算から除外することを認めていた緩和措置を終了することにしました。これにより懸念される国債市場への影響はある程度抑制されつつあるようです。

まず、補完的レバレッジ比率(SLR)について簡単に整理します。SLRは普通株式や内部留保からなる中核的資本をエクスポージャー額(貸出や国債を含む保有有価証券、デリバティブ等で構成)で割った比率というイメージです。

なお、自己資本比率では分母の資産にリスクウェイトを乗じます。そのため米国債などの影響は考慮されませんが、SLRは銀行などが無理にバランスシートを拡大させていないかをチェックする比率であるため、国債などの額が算出に用いられます。これはリーマンショックで見られた過大な融資などへの反省から適正なレバレッジに収まっているかを把握する尺度として導入されています。

当局は米国の大手銀行にSLRが5%以上となるように求めています。これと国債市場との関係ですが、SLRは分母に国債を含んでいるため、SLRを下げないためには国債の保有にブレーキがかかる按配です。

しかし、昨年春の新型コロナウイルスによる市場の混乱から、国債保有を促すためにSLRを1年の期限付きで(21年3月末迄)、国債と準備預金をSLRの計算から除外することが認められました。この効果は大きく、米大手銀行は規制緩和から最近まで国債の保有を増やし、数千億ドル規模でバランスシートを拡大させてきたといわれています。

しかし金融秩序を重視する民主党左派から、SLR条件緩和停止が求められたこともありFRBは打ち切りを表明しました。

米国国債の1日あたりの取引高が約6千億ドル程度とし、SLR条件緩和措置で購入した国債がこれに迫るとすれば、同措置終了で国債市場に悪影響があるとの懸念はもっともです。

しかしながら、同措置の終了を発表してからの米国債利回りは、欧州のコロナ感染再拡大という懸念が大きいのかもしれませんが、むしろ低下傾向です。背景として市場ではある程度の準備は行っていたと見られます。例えば、プライマリーディーラーはポジションを軽くして備えていたといった報道などが散見されます。

また、当局の配慮も見逃せません。同措置の終了に伴い、FRBは今回、とりあえず同措置を一時的に終了する一方で、SLRのルール変更を行う可能性があることも同時に発表しています。今後パブリックコメントなどを踏まえ変更を考慮する運びと見られます。変更の背景は、SLRの条件緩和措置が市場で機能していたことを踏まえると、何らかの条件緩和措置を含んだ修正になるとの期待や観測が市場に見られます。

なお、別の視点から考えると、今回の決定は金融政策の正常化を段階的に進める一環なのかもしれません。いつかは起きる債券購入の縮小など重要な変更の前に措置を積み上げて、ショックを分散する思惑もあるのかもしれません。


梅澤 利文
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら