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気候変動サミットににじみ出た期待と不安
梅澤 利文
2021/04/26

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概要

今年11月に英国で国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催される予定です。パリ協定では、2030年目標を5年ごとに見直すとされ、国別削減目標(NDC)がCOPで報告されます。今回の気候変動サミットで表明された目標はCOP26の前哨戦と見られ、一部の国に意欲的な温室効果ガス削減目標が見られた一方で新興国には慎重姿勢も見られます。



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気候変動サミット:パリ協定の実現に向けて、温室効果ガス削減目標が示される

バイデン米大統領の呼びかけで、世界の40ヵ国・地域の首脳が参加した「気候変動サミット」が2021年4月22~23日にわたって開催されました。

地球温暖化防止を目指す「パリ協定」の目標実現に向けて、2030年時点における温室効果ガス(大部分が二酸化炭素)の排出削減目標の引き上げや、排出を実質ゼロにする時期の計画が示されました(図表1参照)。

どこに注目すべきか:気候変動サミット、パリ協定、COP26、新興国

今年11月に英国で国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催される予定です。パリ協定では、2030年目標を5年ごとに見直すとされ、国別削減目標(NDC)がCOPで報告されます。今回の気候変動サミットで表明された目標はCOP26の前哨戦と見られ、一部の国に意欲的な温室効果ガス削減目標が見られた一方で新興国には慎重姿勢も見られます。

2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みで、16年11月に発効したパリ協定は,新興国を含めて温室効果ガス削減に取り組むことを約束したとして注目されています。パリ協定は、世界の平均気温上昇を産業革命前に比べ1.5℃までに抑える努力をするということなどを目標に掲げています。

ただ、18年に開催されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、当時各国が提出していた30年までの削減目標を足し合わせても、2100年までに気温は約3℃も上昇してしまうとの推定が示されました。その後、トランプ政権においてパリ協定離脱が表明されました。

このような流れを捉えれば、今回の気候変動サミットで政治的に対立する米中が気候問題で同じ席に着いたこと、多くの国が30年までの削減目標を積極化させた点で大いに期待したいところです。

しかしながら、改めて気候問題を巡る先進国と新興国の対立点もしくは何が公平な負担かという問題が浮き彫りになった面があり新興国の削減目標は先進国程明確ではありません。なお、各国の30年削減目標をいつ時点に比べ減らすのかという基準年で見ると、各国とも温室効果ガスの直近のピークを基準年としています (図表2参照)。欧州連合(EU)やロシアは90年、日本は13年度です。都合のいい時を選んでいる面はありますが、各国の事情が異なる中、同じ時刻で始める入学試験のような公平さとは分けて考えるべきかもしれません。

次に、温室効果ガスの大部分を占める二酸化炭素の排出量を国別に足元見てみると、中国がトップの約28%で米国の倍程度となっています。しかし、1人当たり排出量では米国が14.6(トン/人)と中国の倍以上となっています。この1人当りの排出量の差は過去の経済成長の蓄積が反映していると見られます。従ってその負担は先進国が負うべきとの考えで新興国が削減目標に様子見姿勢をとる背景の一端が伺えます。

先進国と新興国に様々なギャップがあるからこそ、話し合いの場が設けられた点は前進です。米国からはギャップを埋めるべく資金支援の提案も聞かれました。ただ、中国の参加にしても気候問題の主導権争いのために参加したに過ぎないという面がないとは言えず、今後も注目が必要と思われます。


梅澤 利文
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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