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米5月のCPI上昇も一過性との見方と今後の注目点
梅澤 利文
2021/06/14

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概要

一月ほど前に、米国4月の消費者物価指数(CPI)が大幅な上昇となったときには、インフレ率の上昇が一過性なのか否かを巡って意見が分かれていた印象です。しかし、時間の経過と共に市場では、現局面でのインフレ率の動向については上昇は一過性との見方が優勢となっています。ただインフレ率の今後の動向には注目すべき点もあると思われます。



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米5月CPI:インフレ率は4月に続き、5月も大幅な上昇ながら市場は冷静

米労働省は2021年6月10日に5月の消費者物価指数(CPI)を発表しました。総合CPIは前年同月比5.0%と、市場予想(4.7%)や前月(4.2%)を上回りました(図表1参照)。

変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIも3.8%と、市場予想や前月を上回りました。ただ、5月のCPI発表直後を除けば米10年国債利回りは概ね低下(価格は上昇)し、インフレ率上昇は一過性との市場の見方が示唆されました。

どこに注目すべきか:5月CPI、新型コロナウイルス、期待インフレ率

一月ほど前に、米国4月の消費者物価指数(CPI)が大幅な上昇となったときには、インフレ率の上昇が一過性なのか否かを巡って意見が分かれていた印象です。しかし、時間の経過と共に市場では、現局面でのインフレ率の動向については上昇は一過性との見方が優勢となっています。ただインフレ率の今後の動向には注目すべき点もあると思われます。

まず、一過性と見られている背景を簡単に整理します。大きな要因は新型コロナウイルスにより価格変動が大きくなった項目の影響です。弊社では新型コロナで価格変動が大きかった7つの項目、具体的には、宿泊費、中古車、レンタカー、航空運賃、テレビ、玩具、パーソナルコンピューターがCPIの変化に及ぼした影響をコアCPIについて算出しています。7品目の影響は4月、5月共に概ね4割程度を占めています。7項目がCPI指数に占める構成割合はコアCPI指数で7%に満たない計算です。逆に言えば、新型コロナの影響を受けにくい項目の上昇率が2%前後で、比較的落ち着いていることが一過性との見方のひとつの要因と見ています。

また、原油など資源価格の上昇もインフレ率上昇要因と見ています(図表2参照)。特に米国はガソリン価格とインフレ率に相関が見られます。新型コロナ後の需要回復が原油価格などを押し上げたと見られます。ただ、供給を見ると米国でも石油生産が出遅れ気味です。石油輸出国機構(OPEC)も増産には慎重な構えです。今後は需給のバランスが原油などの価格動向を左右すると思われます。

物流の遅延も価格上昇要因と見ています。物流システムの回復には1~2年と言った単位で時間がかかることも想定されます。ただ一過性の長さを引き伸ばすことで、物流遅延も長めの一過性要因と市場で見なされているようです。

足もとのインフレ率の上昇は一過性としても、今後のインフレ率上昇の可能性を完全に否定することは難しいように思われます。米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ率の動向を既に決め付けたというよりは、様々な経済指標をもとに今後のインフレ動向を判断している段階と見ています。注目する指標には賃金など雇用データと期待インフレ率などが挙げられそうです。ただ、期待インフレ率は調査(図表3参照)や物価連動債など市場価格からの推定が利用されますが、変動が大きく、本当の期待インフレ率の測定は困難です。そこで当局はモデルを工夫して測定精度を高めています。それらの結果に限れば、現段階でインフレ率上昇懸念は極端に高くない印象です。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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