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英中銀の引締め方針を冷静に受け止める
梅澤 利文
2021/08/06

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概要

英国のインフレ率が上昇している背景には、他国同様、一過性の要因が含まれていると思われます。しかし英国では賃金も上昇するなど雇用市場の回復が見られます。英中銀の声明文では金融緩和維持の方針が繰り返されていますが、同日に公表された金融政策報告では金融引締めの方法が提示されており、如何に引き締めを進めるかに注目がシフトしているようです。



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イングランド銀行:物価上昇や雇用市場の回復を受け金融緩和の終わりが近づく

英国イングランド銀行(中央銀行)は2021年8月5日、政策金利を市場予想通り過去最低の年0.1%で据え置くと発表しました。国債や社債を買い入れる量的緩和策も据え置きましたが、ソーンダース委員が反対しました。年末をまたず購入をすぐ終えるべきとの考えを示しました。

英国では新型コロナウイルスの行動制限緩和で景気やインフレ率の上昇(図表1参照) 、雇用環境も改善していることから(図表2参照)大規模な金融緩和の終了が視野に入り始めています。

どこに注目すべきか:英国中銀、方針、インフレ見通し、雇用市場

英国のインフレ率が上昇している背景には、他国同様、一過性の要因が含まれていると思われます。しかし英国では賃金も上昇するなど雇用市場の回復が見られます。英中銀の声明文では金融緩和維持の方針が繰り返されていますが、同日に公表された金融政策報告では金融引締めの方法が提示されており、如何に引き締めを進めるかに注目がシフトしているようです。

英中銀は半年前、金融引き締め方針の再検討を指示していました。これまでの方針では政策金利が1.5%になるまで購入資産の再投資を続け、残高を維持する考えでした。しかし、今回の方針では、政策金利が0.50%まで引き上げられた段階で、再投資を止めてバランスシートの受動的(自然な減少)な縮小を開始するとしています。過去の方針では再投資の停止は政策金利が1.5%に達する水準を示唆していたことに比べ前倒しされた格好です。英中銀がタカ派(金融引締めを選好)的と見られる要因です。

次に、積極的なバランスシート(債券残高)の縮小については、政策金利が少なくとも1%に達した場合にのみ、購入資産の一部の売却を検討するというやや慎重な姿勢です。そこまで先の話は状況を見ながらということと思われます。

英中銀の引締めで想定される姿は、債券購入が停止された後、バランスシート縮小よりも利上げを先行する考えと思われます。英中銀のベイリー総裁は政策金利の変更は効果が明確であるのに対し、債券購入は景気への効果などが不透明であると感じている模様です。

英中銀がタカ派の度合いを強めた背景はインフレ率見通しの上方修正と見られます。英中銀は今回の声明で5月のインフレ報告で示したインフレ予想を、今回、引き上げる必要に迫られたと述べています。なお、英中銀は5月時点では2~3%程度でのインフレ率の推移を想定していましたが、8月のインフレ報告では4%程度に引き上げています。

もっとも、足元のインフレ率は半分程度がベース効果(前年の価格下落による今年の押し上げ)と見られます。したがって英中銀がタカ派的といっても、金融引締めを急ぐと言う意味ではなく、英中銀の考え方や今後の方針を早めに示し、市場に考える余裕を与えて、将来の引き締め開始におけるショックを和らげることも意図しているように思われます。

なお、英中銀は雇用については環境の改善を認識しているものの、改善が持続的なのか確認したい面もあるようです。英国の経済再開や、欧州連合からの労働力減少により、賃金などに回復がみられます。ただし、賃金上昇はテクニカルな効果による押し上げも考えられます。英国の失業率は、新型コロナウイルス前に比べて1%程度高く、改善の余地が残されています。今後の持続性を確認しながら正常化を進める姿勢でのタカ派化とも見られます。英中銀の方針で引締めのメニューは示されましたが、市場は冷静に受け止めたようです。


梅澤 利文
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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