Article Title
中国、消費者物価のこれからの上昇要因
梅澤 利文
2021/10/14

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

概要

中国で月前半に発表された主な経済指標を見ると、輸出は市場予想を大幅に上回り、当面の中国経済の下支え要因と見られます。一方、資金調達の動きは中国当局の規制強化の動きもあり全般的に鈍くやや不安材料です。物価動向は消費者物価が9月に低下する一方、生産者物価は歴史的水準にまで上昇しました。今後の中国の物価動向には注意が必要です。



Article Body Text

中国経済指標:貿易統計で輸出は市場予想を上回る。生産者物価は歴史的に高い伸び

中国税関当局が2021年10月13日に発表した9月の貿易統計で輸出は前年比28.1%増で市場予想、前月を共に上回りました(図表1参照)。輸入は17.6%増と、市場予想、前月を下回りました。貿易収支は大幅な黒字となりました。

中国人民銀行(中央銀行)が13日に発表した9月の中国社会融資総量は約2.9兆元と、市場予想の約3.05兆元、前月の約2.96兆元を下回りました。信用の伸びの減速は不動産規制を受け低調な消費者ローン、シャドーバンキングの縮小、国債や社債発行の減少などによります。

中国国家統計局が14日に発表した9月の生産者物価指数(PPI)は前年比10.7%上昇と、市場予想の10.5%、前月の9.5%を上回りました。一方、同時に発表された9月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.7%上昇と、市場予想と前月(共に0.8%)を下回りました(図表2参照)。

どこに注目すべきか:貿易統計、資金供給、生産者物価、石炭

中国で月前半に発表された主な経済指標を見ると、輸出は市場予想を大幅に上回り、当面の中国経済の下支え要因と見られます。一方、資金調達の動きは中国当局の規制強化の動きもあり全般に鈍くやや不安材料です。物価動向は消費者物価が9月に低下する一方、生産者物価は歴史的水準にまで上昇しました。今後の中国の物価動向には注意が必要です。

中国は不動産企業の債務懸念など様々な問題を国内に抱えています。このうえ仮に外需も冷え込むとなると内憂外患となる恐れもあっただけに、9月の堅調な輸出は中国景気に安心材料と見られます。

ただ、9月の輸出が堅調であった背景には、外需の底堅さという面がある一方で、港湾活動再開による特需が含まれていると考えられます。中国有数の港である寧波舟山港は新型コロナウイルスの感染で閉鎖されていましたが8月後半から徐々に再開し、9月には稼働状況が高まったと見られます。このような特需を除いた本来の外需がどの程度かは今後の確認が必要ですが、今回の輸出の回復はある程度割り引く必要はありそうです。

次に物価動向を図表2で見ると目に付くのは生産者物価指数の上昇です。原油などエネルギー価格や原材料価格の上昇が背景と見られます。もっとも、鉄鉱石や銅などの価格が下落もしくは横ばいとなっているものもあります。

そうした中、足元で上昇しているのが石炭です。電力不足で石炭への一部回帰が見られる中、山西省や陝西省など主要石炭産地が洪水の影響で石炭の生産活動が大幅に抑制されています。中国当局には早すぎる脱石炭を見直す機運が見られます。目論見どおり増産となれば価格の落ち着きも期待されますが、生産活動の回復を見守る必要があります。

消費者物価は足元は低水準です。ただ生産者物価の上昇により、潜在的な消費者物価の上昇圧力が高まっています。中国国務院(政府)は8日に電力料金は指標に対して最大20%まで上昇を認めると発表しました(従来は10%)。上限を2倍に引き上げたことで電力料金の上昇が想定されます。この影響を市場の予想で見てみると、当初は0.5%程度インフレ率を引き上げるに過ぎませんが、電力料金は波及効果が大きく、その後インフレ率が徐々に高まることが予想されているようです。それ以外にも中国の製造業に価格転嫁の意向が想定されます。潜在的なインフレ懸念がある中、中国の金融政策は全面的かつ一律的な金融緩和よりも、零細企業など的を絞った緩和策が取られる可能性が高いと思われます。


梅澤 利文
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


豪ドルの動向を左右する要因について

ロシアが天然ガス供給を止めたらユーロ圏成長率はどうなるか

フィンランドのNATO加盟の動きと中立化政策

中国4月の主要経済指標の教訓

米国4月のCPI、減速はしたが、思ったほど下がらず

インド中銀、緊急会合による利上げの背景