Article Title
高水準を維持も減速感が続くドイツ
梅澤 利文
2021/11/25

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

概要

ユーロ圏の景況感を11月のPMIで見ると高水準を辛うじて維持しました。ただユーロ圏で経済規模が最大のドイツの景況感をIfo指数で見ると軟調となっています。どちらが実態に近いかといえば、足元のユーロ安を見ても独Ifo企業景況感指数の方が実態に近いと思われます。独経済の先行きが不透明となる中、同国の舵取りはショルツ氏にゆだねることとなります。



Article Body Text

欧州景況感指標:高水準を維持するも、ドイツの景況感に減速感が見られる

IHSマークイットが2021年11月23日に発表したユーロ圏の11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は58.6と、市場予想の57.4、前月の58.3を上回りました(図表1参照)。

ドイツのIfo経済研究所が11月24日に発表した11月の独Ifo企業景況感指数は96.5と、市場予想の96.7、前月の97.7を下回り、4月以来の低水準となりました(図表2参照)。今後半年の見通しを示す期待指数も低下しました。

どこに注目すべきか:製造業PMI、独Ifo企業景況感指数、ショルツ

ユーロ圏の景況感を11月のPMIで見ると高水準を辛うじて維持しました。ただユーロ圏で経済規模が最大のドイツの景況感をIfo指数で見ると軟調となっています。どちらが実態に近いかといえば、足元のユーロ安を見ても独Ifo企業景況感指数の方が実態に近いと思われます。独経済の先行きが不透明となる中、同国の舵取りはショルツ氏にゆだねることとなります。

まず、底堅さを見せた11月のユーロ圏製造業PMIを振り返ります。11月のユーロ圏製造業PMIは市場予想を上回ったように「意外に強かった」のが第一印象でした。内容を見ても先行きを示唆する新規受注指数は50を大きく上回り受注が当面の下支え要因と見られます。

ただ、ユーロ圏製造業PMIに注意が必要です。ユーロ圏ではエネルギー価格上昇や供給問題でコスト増に直面しています。供給問題では納期の長期化が見られ、通常であれば生産活動が活況という解釈から納期の長期化はプラス要因ですが、現状では割り引く必要があると思われます。

別の注意としてユーロ圏の景気回復度合いに違いが見られることです。11月製造業PMIについて見ると、フランスの製造業PMIは54.6と、前月を上回り堅調でしたが、ドイツの製造業PMIは57.6と小幅ながら前月を下回りました。

そこで、次にドイツの景況感を独Ifo企業景況感指数で確認すると(図表2参照)、今年春をピークに減速傾向です。気がかりなのは6ヵ月先を示唆する期待指数が94.2と、今年6月をピークに5ヵ月連続で低下していることです。

ドイツ製造業はこの半年ほど減速感が強まっています。その背景として、主要な貿易相手である中国の景気減速が考えられます。また、ドイツは自動車を主力産業とすることから、半導体不足など供給問題が生産を抑制したと見られます。さらに足元では新型コロナウイルスの感染再拡大の影響も深刻です(図表3参照)。

欧州の足元のコロナの感染状況を見ると、ドイツなどのように感染が深刻な国と、イタリアやスペインなど感染は見られますが相対的に感染が抑制された国とに分けられます。コロナ感染が、今は感染が抑えられた国にも広がるのか、それとも収束するのかなど今後どのように展開するのかを予測はできませんが、すでに感染が拡大しているドイツなどでは少なくとも短期的に若干景気の下押し要因となることが見込まれます。

そのドイツの新たなリーダーに社会民主党(SPD)のショルツ財務相が就任する方向です。想定される政策については正式な就任を待って別にレポートする予定です。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


米求人件数とADP雇用報告にみる労働市場の現状

韓国「非常戒厳」宣言と市場の反応

植田総裁のインタビュー、内容は利上げの地均し?

フランス政局混乱、何が問題で今後どうなるのか?

11月FOMC議事要旨、利下げはゆっくり慎重に

「欧州の病人」とまで言われるドイツの論点整理