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回復の兆しがほのかに見えた中国経済指標だが
梅澤 利文
2022/01/13

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概要

中国の21年12月の生産者物価指数に下落の兆候が見られました。原材料価格の上昇によるコスト高は景気回復の要因と見られるだけに、改善に持続性があるかが注目されます。また、社会融資残高に増加の兆しが見られます。ただ、資金調達環境の本格的な回復には不安も残ります。景気回復の兆しが見えたものの、回復を実感するには時間がかかりそうです。



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中国12月経済統計:生産者物価に落ち着き、資金調達環境に底打ちの兆候が見られる

中国国家統計局が2022年1月12日に発表した21年12月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比10.3%上昇と、市場予想の11.3%、11月の12.9%上昇を下回りました(図表1参照)。また、12月の消費者物価指数(CPI)は同1.5%上昇と、市場予想の1.7%上昇、11月の2.3%上昇を下回りました。

中国人民銀行(中央銀行)が12日に発表した社会融資残高(銀行や市場からの資金調達総額)は前年比10.3%増と前月の10.1%から改善しました(図表2参照)。12月の社会融資規模は2兆3700億元でした。

どこに注目すべきか:PPI、CPI、原材料、資金調達、預金準備率

中国の21年12月の生産者物価指数に下落の兆候が見られました。原材料価格の上昇によるコスト高は景気回復の要因と見られるだけに、改善に持続性があるかが注目されます。また、社会融資残高に増加の兆しが見られます。ただ、資金調達環境の本格的な回復には不安も残ります。景気回復の兆しが見えたものの、回復を実感するには時間がかかりそうです。

中国の生産者物価指数(PPI)の内訳をセクター別に見ると、12月に大きく鈍化したのは鉱業と原材料セクターです。中国政府が昨年後半からエネルギーや原材料高の抑制に向けた措置を相次いで打ち出した効果が表れたものと思われます。また、PPIが上昇し始めたのは1年ほど前で、前年比の上昇率は低下しやすい面もあるようです。

中国の物価動向で懸念されるのはPPIとCPIの上昇率の格差が大きかったことです。原材料価格の上昇が価格転嫁できていない分、工業利益などに大幅な減少が見られ企業収益の悪化が懸念されてきました。PPIとCPIのギャップが縮小したことは明るさの兆しと見ています。

もっとも、原材料価格が上昇を続ける場合などPPIが今後思うように下がらないことも想定されます。したがって中国の物価動向の景気に対する影響については、改善に兆しは見られますが、当面見守る必要もありそうです。

次に、資金調達環境ですが、12月の社会融資規模は概ね市場予想(約2兆4000億元)通りでした。これにより社会融資残高は前年同月比で10.3%と、ようやく改善傾向が見られました。人民銀が21年12月6日に預金準備率の引き下げを発表(実施は12月15日)したことに代表されるように、中国当局は昨年後半終わりになって金融もしくは財政緩和姿勢に徐々に転じていました。このあたりの変化は事前に中国当局から表明されていました。

そうした中、12月の社会融資規模が2兆3700億元と一定規模の資金調達額が確保されたのは景気回復の兆しと見られそうです。ただ、内容を見ると回復は道半ばといえる面もあり注意が必要です。例えば、資金調達の大きかった項目を見ると政府の債券発行が相当程度を占めています。一方で、預金準備率を引き下げたものの、民間部門の資金需要を引き出したとは見えません。また、中国の銀行による人民元建て融資統計を見ても家計などが借入を増やした様子はうかがえません。社会融資残高は拡大したものの、預金準備率などの引き下げで意図した成果の実現には時間が必要と見られます。この背景には中国当局も本格的な金融緩和政策には踏み出しにくい環境があるのではないかと思われます。なぜなら、PPIがようやく落ち着きを見せた段階で、不動産市場投機抑制の手を緩める段階ではないと中国当局は考えているようです。先月1年物の最優遇貸出金利(ローンプライムレート)を引き下げましたが不動産投資に影響がある5年ものは据え置きました。

中国経済指標に景気回復の兆しは見えますが、目先はオミクロン株の懸念もあります。景気てこ入れ策は見られるも、回復を実感するのは今年後半となるのかもしれません。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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