Article Title
1月米CPI上昇の内容を検討
梅澤 利文
2022/02/14

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

1月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で7.5%上昇と、1982年2月以来約40年ぶりの高水準となりました。これを受け米10年国債利回りは2%を上回る局面もありました(その後ウクライナ問題の悪化などを受け2月14日、日本時間では2%割れ)。CPIの水準が高かったことに加え、CPIの内容の一部も米国債利回りの押し上げ要因になったものと見られます。



Article Body Text

米1月のCPI:前年同月比で7.5%上昇と、市場予想を上回りインフレ懸念が示された

米労働省が2022年2月10日に発表した1月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で7.5%上昇と、市場予想の同7.3%上昇、前月の同7.0%上昇を上回りました(図表1参照)。食品とエネルギーを除いたコアCPI指数も前年同月比で6.0%上昇と、市場予想の同5.9%上昇、前月の5.5%上昇を上回りました。

2月10日の米国債市場では、1月のCPIの予想外の上昇などを受け、国債利回りが上昇(価格は下落)し、米10年国債利回りは2%を上回る動きとなりました。

どこに注目すべきか:米1月CPI、市場予想、食料品、家賃

最初に、市場が想定する今後の米国のインフレ動向のイメージは、足元の上昇傾向から、遅くとも年後半にはインフレ指数が低下に転じるというイメージと見られます。もっとも、低下に転じる時期や程度について市場の見方にバラツキが見られるなか、インフレ率の低下予想は後ズレしており、その結果、金融引締めの想定度合いが高まっています。

今回の米CPIでは、インフレ率が低下に向かう兆しも見られます。例えばガソリン価格は前月に比べ、伸びが減速しました(図表2参照)。昨年のエネルギー価格の伸びが今年も繰り返される可能性は低いと見られることから、インフレ率が低下すると想定する要因の1つとなっています。

しかしながら、1月の米CPIでは幅広い項目に上昇の兆しが見られることから、ガソリン価格などの伸びが鈍化してもインフレ率は容易に低下しないとの見方も浮上しました。

例えば同じエネルギーの電力価格はラグを伴って上昇しています。他にも食料品は外食を除いた飲食料品価格は肉類などが上昇しています。なお、外食の伸びが小幅にとどまったのはオミクロン株の影響も考えられ、今後の展開は異なる可能性も考えられます。

電力料金は寒波という気候要因の影響が一部には考えられます。しかしながら、原油などの価格上昇が遅れを伴い上昇させた可能性があります。インフレ率の低下を遅らせる要因となる可能性に注意は必要です。

CPIの上昇を項目別に見る上で、サービス価格と自動車や家具、日用品などを含む財価格に大別することが行われます。米1月のCPIでは財価格がサービス価格の上昇を上回る展開が続きました。財価格として中古車価格を見ると高水準です。財価格がなかなか低下しないことがインフレ率の上方修正を余儀なくさせた原因と見られます。ただ、中古車については実際の取引価格が足元ではやや頭打ちと軟調になっている点に注意も必要です。

なお、航空運賃はオミクロン株感染拡大の中上昇しました。今回インフレ率が予想外に上昇した1つの背景と見られます。

今後のインフレ動向を占う上で、CPI構成項目の中で気になる項目は家賃動向です。家賃は持ち家に家賃を支払っていることにする帰属家賃(図表2参照)と、賃料が主な構成要因です。米CPI指数全体に占める家賃関連の構成割合は約3分の1を占めるだけに重要です。他の項目に比べ変動性は低いものの上昇傾向を続けており、インフレ率が低下しにくい要因の1つと見られます。

今回の米CPIはインフレの長期化を想定させる内容であったと見られます。その点で金融当局が引締め姿勢を強める材料になると思われます。ただ、過大な利上げを織り込む必要があるかについては慎重に判断したいと考えます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


米大統領選・議会選挙とグローバル市場の反応

米雇用統計、悪天候とストライキの影響がみられた

植田総裁、「時間的に余裕がある」は使いません

ECBの今後の利下げを景況感指数などから占う

ロシア、BRICS首脳会議にかける思い

ブラジルレアルの変動要因と今後の展望